なぜ「新田原基地」? 空自F-35B最初の配備先 “ここしかない”ほどベストな立地のワケ
有事を想定しても「那覇より新田原」
そして現在、南西諸島の島嶼防衛が日本の安全保障上の最大の課題であることも、F-35Bを運用する飛行隊が新田原基地に配備されるこことなった理由の一つだと筆者は思います。
航空自衛隊の戦闘機が配備されている基地で、最も南西諸島の島嶼部に近いのは那覇基地ですが、那覇基地は有事の際に先制攻撃を受けることも十分考えられます。
仮に那覇基地の航空反撃能力が失われたとしても、後詰めとして艦艇や航空自衛隊の戦闘機を運用する基地以外からの運用も可能な柔軟性の高いF-35Bを、南西諸島の島嶼部から遠くない新田原基地に配備しておくことは、抑止力強化の面でも合理的な考え方だと言えるでしょう。
着々と進んでいる新田原での受け入れ準備
防衛省は有事の際、基地への先制攻撃による航空反撃能力の喪失を避けるため、2021年度から航空自衛隊基地へ、航空機などを分散配置するための分散パッドの整備を進めていますが、その整備は新田原基地から開始されています。
また同省は前述した新富町役場に対する回答の中で、新田原基地へのF-35Bの配備に伴ない、指揮所、格納庫、訓練施設などの受入施設の整備も予定していると述べています。令和6年度予算の概算要求には、これらの受入施設を整備するための経費も計上されています。
航空自衛隊向けのF-35Bの初号機は来年(2024)年の秋ごろを予定しており、戦力化はかなり先の事となりますが、これまで述べてきたように、選ばれるべくして配備先に選ばれたと言っても過言ではない新田原基地のF-35Bの受入体制は、着々と構築されつつあります。
【了】
Writer: 竹内 修(軍事ジャーナリスト)
軍事ジャーナリスト。海外の防衛装備展示会やメーカーなどへの取材に基づいた記事を、軍事専門誌のほか一般誌でも執筆。著書は「最先端未来兵器完全ファイル」、「軍用ドローン年鑑」、「全161か国 これが世界の陸軍力だ!」など。
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