F-35Aの“恋人”12年越しの導入か 新対艦ミサイル「JSM」とは 来年度予算に取得費と“自分磨き費”!?

あれ、F-15Jの「JASSM-ER」は何?

 JSMはF-35のA型とC型の胴体下部両側面のウェポンベイに各1発を搭載できるよう、胴体が設計されており、また主翼も展張式に変更されています。

 また詳細は不明ですが、主導力のターボジェット・エンジンの変更と、それに伴うエアインテークの形状の設計変更も行われています。これらの変更によってJSMは高高度を飛翔した場合の最大射程が500kmに達するとも言われています。

 他方、令和6年度防衛予算の概算要求には、能力向上改修を施したF-15Jに搭載される長射程巡航ミサイル「JASSM-ER」の取得費も計上されています。

 異なる種類の戦闘機発射型対艦ミサイルの取得は一見無駄に思えますが、ミサイルの誘導装置を妨害する能力も向上している現状において抑止力として機能させるためには、国産の12式地対艦誘導弾(空発型)なども含め、複数の戦闘機から発射する長射程対艦/巡航、ミサイルを保有していた方が、日本政府の提唱する「スタンド・オフ防衛能力」の完成度は高くなると筆者(竹内 修:軍事ジャーナリスト)は思います。

JSMと一つになるにはF-35Aの“自分磨き”が必要!?

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UAEで開催された防衛装備展示会「IDEX2015」に展示されたJSMの実大モックアップ(竹内 修撮影)。

 防衛省・航空自衛隊が最初にF-35Aの導入を決めたのは2011年12月のことですが、この時防衛省が作成した、次期戦闘機の機種選定の詳細をまとめた資料には、航空自衛隊がF-35Aの調査を行うにあたって、調査団がノルウェーを訪問していたとの記述がありました。

この点から見て、航空自衛隊は早い段階からF-35AとJSMの導入をワンセットで考えていたと見るべきですが、航空自衛隊にとって12年越しの恋人(?)であるJSMの運用開始までには、まだクリアしなければならない事があります。

 JSMはブロック4ソフトウェアをインストールしたF-35から運用が可能となりますが、航空自衛隊はブロック3Fが標準ソフトウェアであったころからF-35Aを導入しています。令和6年度予算の概算要求には、ブロック3Fソフトウェアがインストールされた状態で納入された29機のF-35Aのソフトウェアをブロック4へ更新するなどして、JSMの運用を可能にする経費として234億円が計上されています。

 ソフトウェアを更新しないと使えない機能がある点はスマホのようでもありますが、スマホのソフトウェアのアップデートにはほとんどお金がかからないのに対し、ソフトウェアのアップデートを中心とする作業で1機あたり約8000万円の経費を必要とするあたりに、筆者は「やはりF-35AとJSMも防衛装備品なのだなあ」と妙に関心をしてしまいました。

【了】

【これが「恋人と一緒になったF-35」の図です(画像)】

Writer: 竹内 修(軍事ジャーナリスト)

軍事ジャーナリスト。海外の防衛装備展示会やメーカーなどへの取材に基づいた記事を、軍事専門誌のほか一般誌でも執筆。著書は「最先端未来兵器完全ファイル」、「軍用ドローン年鑑」、「全161か国 これが世界の陸軍力だ!」など。

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コメント

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1件のコメント

  1. JASSM-ERは対艦ミサイルではないですよね?