戦車界の“最速伝説” FV101「スコーピオン」なぜ生まれた? ギネス級の最高速度とは

奇抜な兵器の割には世界的なヒットに

 しかし、輸送機に積んですぐに作戦可能な戦車を作るというのは簡単な話ではなく、スペースと積載量の関係からサイズと重量に大きな制約があり、困難を極めました。

 それでも1960年代前半になると、新型空挺戦車開発の権利を獲たアルヴィスで、鉄よりも軽い、アルミニウムを戦車の装甲に使う方法が考え出されます。さらに、戦車用のエンジンより軽い、市販のジャガー製XK6直列6気筒液冷ガソリンエンジンを改造して積むことで、軽量化と省スペース化を実現。まず1970年5月にイギリス陸軍との間に275両の購入契約が締結されます。

 FV101「スコーピオン」の車体重量はわずか8tと、当時の戦車としてはかなり軽く、C-130「ハーキュリーズ」に2両格納して運べるほか、大型ヘリコプターでも吊り下げて空輸でき、イギリス軍の要望を満たしていました。そしてその軽さにも関わらず、同車は76mmカノン砲を搭載し、HESHという特殊な砲弾を使えば、ソ連製のT-55戦車でも撃破が可能でした。

 装甲に関しては重機関銃の弾丸や砲弾の破片から身を守る程度のものでしたが、空輸を目的として徹底的に軽量化した車体であるため、速度は高く、偵察や空挺作戦を行うには適していました。

 しかし、ソ連軍を始めとした東側陣営の国がT-72戦車を投入しだすと、さすがに「スコーピオン」を戦車として扱うのは困難だとして空挺戦車や軽戦車扱いはされなくなり、主にその足の速さを活かした偵察車両として使用されることになります。

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湾岸戦争に参加したFV101「スコーピオン」(画像:イギリス国防省)。

 偵察車両としての「スコーピオン」の寿命はかなり長く、1982年のフォークランド紛争や1991年の湾岸戦争に参加。イギリス陸軍では1994年に退役しましたが、アイルランド軍やボツワナ軍など、陸軍が小規模な国では2023年現在も戦車として使用しており、延命措置としてジャガーのガソリンエンジンをアメリカのカミンズ製ディーゼルエンジンに換装したタイプもあります。

 奇抜な発想で作られたのにも関わらず、「スコーピオン」は最終的に3000両以上が製造されたヒット兵器となりました。2022年2月からロシアとの戦闘が続いているウクライナ軍も同車を欲しがったという話もあります。

【了】

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1件のコメント

  1. これで80キロ出したら絶叫マシン