なぜ車掌車は消えたのか 貨物列車の最後尾 中で車掌はどんな仕事をしていた?

今でも連結することがある!?

 貨物列車の車掌業務が廃止されたと述べてきましたが、実は車掌車そのものは消滅しておらず、ごく少数ですが現役で活躍しています。ただし、本来の車掌車として運用されているものはなく、別の役割を担っています。

 たとえば東武鉄道鬼怒川線で運行されている観光列車「SL大樹」には、機関車の後ろに車掌車が連結されています。ただし、この車両には車掌は乗務しておらず、車掌車の中には保安装置であるATS(自動列車停止装置)が積まれており、列車の安全を確保しています。

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東武鉄道鬼怒川線で運行されている観光列車「SL大樹」には、機関車の後ろに車掌車が連結されている。この車掌車には、ATSなど保安設備を搭載している(画像:東武鉄道)。

 JRでは、巨大な変圧器などを輸送する特大貨物にも車掌車が連結されています。乗っているのは車掌ではなく、変圧器メーカーの係員など。添乗するための車両として連結されているのです。

 また、新造した車両を鉄道会社まで輸送する甲種輸送でも、最後部に車掌車が連結される場合があります。これは途中で長時間の留置が必要になる場合など、車掌車でブレーキを作用させて輸送中の車両が動かないようにする役割を担っています。もっとも、最近はブレーキシステムの改良により車掌車の連結が必要ないケースが増えており、甲種輸送における車掌車の連結はレアケースとなっています。

 このように、時代とともにその役割が変化している車掌車ですが、いちばん新しいヨ8000形式でも1979(昭和54)年製造で、登場から40年が過ぎています。残存する車両も20両程度しかありません。とはいえ小型であまり場所を取らないためか、保存車両は意外と多く、日本各地の公園や駅などでその姿を目にできます。

【了】

【見たことある?】車掌車の内部(写真)

Writer: 児山 計(鉄道ライター)

出版社勤務を経てフリーのライター、編集者に。教育・ゲーム・趣味などの執筆を経て、現在は鉄道・模型・玩具系の記事を中心に執筆。鉄道は車両のメカニズムと座席が興味の中心。座席に座る前に巻尺を当てて寸法をとるのが習慣。言うなれば「メカ&座席鉄」。

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