「ゲーム」が「軍用」に下剋上! フライトシミュレーター止まらぬ進化 空軍が訓練に採用するもっともな理由

機体と同様に老朽化する訓練システム 更新どうしよう?

 フランス空軍は、かつて運用していたミラージュ2000C戦闘機の訓練用シミュレーターを、一般販売されているEagle Dynamics社の「DCS World」というソフトをベースにして開発したことがあります。

 もともとは、フランス空軍もミラージュ2000Cの専用フライトシミュレーターを用意し、それを使って教育訓練していました。しかし、これら機材は実機のミラージュ2000Cを運用し始めた1980年代前半から使われていたため、かなり年季が入っており、運用末期の頃には十分な訓練をパイロットたちに提供することができなくなっていたそうです。

 しかも、専用フライトシミュレーターは、その古さゆえに新たに追加購入することもできず、パーツ自体の入手も困難なため運用中のシミュレーター機材を使い続けられるかも不透明でした。

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RAZBAM Simulationsの最新作である「DCS:F-15E」のコックピット画面。ヘッドアップディスプレイ(HUD)やマルチファンクションディスプレイ(MFD)なども再現され、実機のように機能する(RAZBAM Simulations提供)。

 航空機では老朽化による稼働率の低下がたびたび問題になりますが、同じことはその周辺の機材でも起こります。前出のミラージュ2000C用フライトシミュレーターも同様だったといえるでしょう。そこでフランス空軍は、民生品を使って代わりとなる新たなフライトシミュレーターを入手しようと考えたのです。

 このフライトシミュレーターのプログラムを開発したのは、RAZBAM Simulations(ラズバム シュミレーションズ)という会社です。ここは、もともと「DCS World」でミラージュ2000Cのプログラムを作っていました。このソフトは一般向けゲームとして1本59.99USドル(日本円で8000円前後)で販売されており、それ自体は今でも誰もが自由に買えるものでした。

 しかし、その美しいグラフィックや高いクオリティーにフランス空軍が着目、このプログラムをベースにして、欧州企業とともに新しい訓練用機材を開発したのです。

 フランス空軍のミラージュ2000Cの運用は2022年に終了していますが、その末期の運用を民生品ベースのフライトシミュレーターが支えていた、という側面があったのです。

【あ…これプロ用なの】「ゲーム」にしか見えない軍も使うフライトシミュレーター(写真)

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