もはや“海のショッピングモール”? 海自「補給艦」20年ぶり新造のワケ 油&貨物に車両運搬・病院も

補給艦の設計・建造ノウハウが途切れる前に

 一方、1987年から1990年にかけて3隻が建造されたとわだ型は、前述したように船体規模も8100トンと小さく、拡張性に限界があるうえ老朽化も進んでいることから、代替艦が必要だと判断されました。

 艦隊随伴能力を推し測るうえで重要な速力も、ましゅう型と比べて2ノット遅い最大22ノット(40.74km/h)で、またディーゼル・エンジンのため、ガスタービン搭載艦よりも加速性が劣るという欠点も有していました。

 また、補給艦の新造自体も「おうみ」が就役してから約18年もの月日が経っており、設計・建造のノウハウを継承するためにも、新型補給艦の整備が必要でした。

 こうした背景もあり2022年12月に策定された防衛力整備計画で「洋上における後方支援能力強化のため」補給艦の増勢が明記され、防衛省は2024年度予算で1万4500トン型補給艦1隻の建造を要求したのです。

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防衛省が取得を計画する新型補給艦のイメージCG(画像:防衛省)。

 新型補給艦は、アメリカ海軍のサプライ級高速戦闘支援艦のように、艦首側に艦橋構造物を配置し、艦尾側に煙突とヘリコプター格納庫、飛行甲板らしきものが置かれているようです。船体中央にはポール型の補給ステーションが確認できます。

 補給能力に関しても、燃料タンクの容量を増やすなどして強化を図っているほか、省人化の一環として艦内の貨物移送装置を自動化するとか。ましゅう型のように医療区画を広くとっている可能性もおおいにあるでしょう。

 さらに、これまでの補給艦と大きく異なる点として、車両の積載・運搬機能を持っている点も特徴です。船体にはRORO船のようにサイドランプが装備されます。これらにより、トラックやシャシーに搭載されたコンテナをそのまま艦内へ積み込めるようにすることで、より効率的に物資の搬入・搬出を実施できるようにしていると推察できます。

 このため、新型補給艦は艦艇に対する燃料・物資の補給だけでなく、南西諸島を始めとした遠隔地で有事があった際、迅速に車両を展開する必要があるような場面でも活用されると思われます。また、大規模災害時は陸上自衛隊の衛生科が装備する「野外手術システム」の輸送や給水車に対する真水の補給拠点としても使用できるとみられます。

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