バスが水面へドボーン!! 「水陸両用バス」ルーツは戦中の超優秀軍用車 アメリカじゃ“ボート”と呼ばれるワケ

都内で見かけることもある水陸両用バス、これらの車両が広まったのには、第二次世界大戦中にアメリカで開発された水陸両用車が関係しています。

米軍で使用された水陸両用車が払い下げられ観光車両化

 都内でも、たまにお台場周辺などを走っていることがある「水陸両用バス」。名前の通り水上・陸上ともに走行が可能なために観光用として利用されていることが多いですが、実はこの元祖は、第二次世界大戦で使用された渡河・上陸作戦に使われた軍用車両です。

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民間に払い下げられ観光用として使用される「DUKW」(画像:パブリックドメイン)。

 第二次世界大戦中の1942年、アメリカ軍が英仏海峡の横断や、日本軍相手の島しょ部への上陸作戦に向け、「DUKW(ダック)」という水陸両用車をゼネラルモーターズで設計しました。

 同車両の大きな特徴は、それまで戦場で使用されていたドイツのシュビムワーゲンやアメリカのGPAといった水陸両用車と比べ、搭載量と水面での安定性の高さが抜群だったことです。数人単位ではなく、水上ならば50名の兵員輸送が可能で、ときには火砲と砲兵をそのまま運ぶこともありました。

しかも、場所によっては泳いで渡れる英仏海峡なら余裕で横断することができ、ノルマンディー上陸作戦では、沖合の艦艇と、海岸の地上部隊を行き来し補給なども行っていました。太平洋戦線でも数々の戦場に使用され、その性能の高さを発揮します。

 同車は最終的に約2万台も生産され、戦後はかなりの数の車両が民間に払い下げられることになりました。すると、世界のリゾート地で観光客向けの車両として改造されて使用されます。その知名度はかなり高く、アメリカで「duck boat(ダックボート)」と言えば、川や湖、海で使用する観光用の水陸両用車を指す意味で通じるそうです。

 ただ本物のDUKWを使った車両は、2023年現在、ほとんど存在しません。かわりに、観光用として新たに作られた車両などが、その役目を担っています。たとえば、お台場でフジエクスプレスが運行している水陸両用バス「TOKYO NO KABA」は、ベース車両が日野自動車、船体部分が形原造船、海上運航用のマリ-ンエンジンはいすゞ自動車製となっています。

 なお、日本で水陸両用バスを運転する場合は、陸上と海上を両方走る必要があるため、バスの運転免許のほかに小型船舶の免許も必要とされます。また、クルマでも船でもあることからクルマ用のナンバーと船舶用の登録が併記されているのも特徴です。

【了】

【画像】え…ハンドルと舵が別なんですか!? これが水陸両用の運転席です。

Writer: 斎藤雅道(ライター/編集者)

ミリタリー、芸能、グルメ、自動車、歴史、映画、テレビ、健康ネタなどなど、女性向けコスメ以外は基本やるなんでも屋ライター。一応、得意分野はホビー、アニメ、ゲームなどのサブカルネタ。

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