NATO高官「加盟国は砲弾の規格統一をしろ!」ウクライナへの供与に悪影響を招いた理由とは
え、規格統一されてなかったの?
規格の不統一を砲弾不足の一因と指摘
北大西洋条約機構(NATO)のロブ・バウアー軍事委員会委員長は2023年10月24日、ロイター通信のインタビューで、155mmりゅう弾砲の砲弾を安定供給するため規格統一の厳守を加盟国に呼びかけていることを明かしました。
155mmりゅう弾砲の砲弾は現在ウクライナ軍に供与されて大量に消費されており、2023年7月から不足が問題になっていました。155mmりゅう弾砲はNATOなどいわゆる西側陣営の標準的な火砲で、車両などで引いて輸送する牽引式のもののほか、フランスの「カエサル」やスウェーデンの「アーチャー」など自走式タイプもウクライナ軍は使用しています。
バウアー氏は、供給不足に陥っている一因として、砲弾の規格統一が行われていない点を指摘します。具体的な国名は出していませんが、同砲弾には2023年現在、14種類の微妙に異なる砲弾が存在しているとのこと。実は製造方法を細かく定めたNATO規格の砲弾はあるのですが、加盟国にそれを厳守する決まりはなく、1990年代の冷戦終了以降、縮小し続けた防衛費などの煽りを受け、砲弾の値段を抑えるために自国なりのアレンジを加えたケースが数多くあるのだそうです。
それら独自規格の砲弾が、ウクライナへの供給を妨げる結果となっており、今回異例の規格統一の厳守を呼びかけるという形になりました。バウアー氏は今後15年ほど防衛費は大幅な増額になるため、NATO規格の砲弾を製造しても、十分な資金が得られるだろうとしています。
ウクライナでロシアとの戦闘が始まって以降、戦場で消費されるりゅう弾砲、自走りゅう弾砲や各種火砲を合わせた、1日平均の砲弾消費量はウクライナ側で6000~7000発とされています。しかし、ロシア側はこの5倍以上の約5万発を撃ちこんでおり、このギャップを埋めるためにも、西側の砲弾供与は必要とされています。
なお、物価高の影響で155mmりゅう弾砲の弾1発あたりの値段は、2022年2月のロシアがウクライナに侵攻した直後の2000ユーロから8000(約125万円)ユーロと約4倍に跳ね上がったそうです。
【了】
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