「何が何でも戦車欲しい!」イスラエルがとった驚きの軍隊づくりとは? スクラップも使え! そして軍事大国に
知恵と根性でスクラップを次々再生
真相はいまだ藪の中ですが、いずれせよ、こうして入手したM4「シャーマン」戦車が、建国前後のイスラエルにおいて貴重な機甲戦力となったのは確かです。
ちなみに、その頃イスラエルを建国するため世界中から集まってきたユダヤ人やユダヤ系の人々の中には、第2次世界大戦中の兵役でM4「シャーマン」を扱った経験がある人が多く、おまけに世界の中古兵器市場には、大戦で使われたあと余剰となった同車が豊富に流通していました。
そこで、国家としてまだ完全な国際的認知も得られておらず、国力にも乏しかったイスラエルは、それらの中古「シャーマン」をスクラップの名目などで買い漁りました。たとえば、兵器として使用できないよう、わざと砲身に穴を開けられたM4「シャーマン」ですら入手して、その穴に金属栓を詰め込み、その上からさらに金属のタガを嵌めて射撃可能なようにした再生戦車もあったといいます。
ほかにも、砲のないM4「シャーマン」に、別ルートで入手したドイツ・クルップ社製の旧式75mm砲を取り付け、とりあえず弾を撃てるようにしたオリジナル改造の「シャーマン」を作り出すなどしています。まさに自分たちの創意工夫と努力で、スクラップ同然の「シャーマン」戦車を戦力として蘇らせていったのです。ある意味で、自国を守ろうという気概がここまでの行動に結びついたといえるでしょう。
一説によると、イスラエル軍が保有する戦車の数は2023年現在、2000両以上あるそうです。ただ、その源流は、前述したような形で入手したものや、スクラップ同然のものを自力で再生した改造戦車から始まっているのです。
【了】
Writer: 白石 光(戦史研究家)
東京・御茶ノ水生まれ。陸・海・空すべての兵器や戦史を研究しており『PANZER』、『世界の艦船』、『ミリタリークラシックス』、『歴史群像』など軍事雑誌各誌の定期連載を持つほか著書多数。また各種軍事関連映画の公式プログラムへの執筆も数多く手掛ける。『第二次世界大戦映画DVDコレクション』総監修者。かつて観賞魚雑誌編集長や観賞魚専門学院校長も務め、その方面の著書も多数。
ジオン軍地上部隊のMSですかW