ウクライナに「泥将軍」は現れる? 過去にはヒトラーも足止め… 微笑むのはロシアか

ウクライナの地にいる「泥将軍」。かつてはナポレオンやヒトラーの軍隊を撃退し、「冬将軍」とともにロシアの救世主でもありました。水を含んだ泥は車両を足止めし、ウクライナ軍の反攻を阻止するには好都合ですが、今年はワケが違うようです。

暑いと「泥将軍」はどうなるのか

 夏に気温が上がると、蒸発量が増え表土は乾きます。しかし地下には水が溜まったまま。秋になって気温が下がると蒸発量が減り、1日の平均気温が5℃を下回るようになると、10月下旬からの雨期も相まって土壌内の水分が飽和し、また「道なき道」が生まれます。

 実はウクライナ北部と南部では土壌の性質が異なります。チェルノーゼムの割合は北部が高く、南部は低くなっています。つまり「泥将軍」はウクライナ全土一律に猛威を振るうわけではないのです。2022年春にロシア軍の攻勢が各方面で行き詰っていたなかで、南部のヘルソン、メリトポリ、トクマク、マリウポリで成功を収められたのは、機甲部隊が「泥将軍」の妨害をあまり受けずに機動でき、補給線を確保できたからだという指摘もあります。

 2023年11月現在、ロシア・ウクライナ戦争の焦点は南部です。ウクライナ軍の反攻を迎撃するロシア軍は、「泥将軍の支援」を期待したいところでしょうが、気温は高かったうえに南部の降水量は少なく、地下水位が下がって平年より乾燥しています。ウクライナ農業省は、農作物の収穫量への影響を懸念していますが、ウクライナ軍にとって「泥将軍」の影響が少ないことは有利に働きそうです。

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1941年11月に撮影された、泥沼にスタックしたドイツ軍車両(Bundesarchiv、Bild 146-1981-149-34A / CC-BY-SA 3.0, CC BY-SA 3.0 DE via Wikimedia Commons)。

 それでもアメリカ陸軍のマーク・ミリー大将は、イギリスのBBCに対し「泥将軍が元気を取り戻すまでにはおそらく30日から45日程度しか期間がない」と語っており、ウクライナ軍には西側からのタイムリーな支援が必要なことを指摘しています。

 しかしアメリカ下院では11月2日、ハマス・イスラエル戦争の勃発により、イスラエルとウクライナへの支援予算を一度に配分するというバイデン大統領の要求は拒否されました。イスラエル支援法案だけが可決されるなど、大統領選挙も睨んでホワイトハウスおよび民主党と共和党は政争中です。気候変動や複雑な国際政治情勢が絡み合い、戦争は文字通り泥沼化していきます。

【了】

【え…】「泥将軍」にやられるロシア戦車です

Writer:

1975(昭和50)年に創刊した、50年以上の実績を誇る老舗軍事雑誌(http://www.argo-ec.com/)。戦車雑誌として各種戦闘車両の写真・情報ストックを所有し様々な報道機関への提供も行っている。また陸にこだわらず陸海空のあらゆるミリタリー系の資料提供、監修も行っており、玩具やTVアニメ、ゲームなど幅広い分野で実績あり。

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