「まだ飛んでない飛行機のための整備士」って!? 謎多き「領収検査員」とは プロ監視人の“推し機”とは?
JAL機としての始まりに立ち会う仕事! 推し機も…?
「たとえば飛行機は、製造現場である地上と、実際に運航される空中とでは機体の状態が変わり、結果的に機内に設置されている配線がたわみます。そういった整備士での経験をもとに、配線が”たわみ”を加味して作られているかどうかなどをチェックするのは日常茶飯事です」(鈴木さん)
領収検査には、彼ら検査員のほか、エンジンや電装系などの整備スキルを持つJALの整備士も渡米し参加します。ただし検査員は、JALに引き渡された機体を日本に運ぶ回送運航「デリバリーフライト」に乗りこむことが通例です。
「領収検査の完了は、新造機の技術的課題がすべて解決し、JAL側に機体が引き渡されたときです。しかし日本へのデリバリーフライトは検査員も乗り込み、客室などをチェックします。やはり検査員としては、自分が担当した機体を気にかけますし、完璧な状態であることを回送運航のなかでも確認したいという、プロの整備士としてのプライドもありますから」(近藤さん)
そのような2人には、それぞれ思い入れのある機体たちがあるそうです。
「個人的な経験のなかで、ボーイング787-8『JA846J』の領収検査が印象に残っています。この機はJALの787型で初めての国内線仕様機だったのですが、実はシアトルに赴任する直前までまで、この787国内線仕様機の客室仕様の策定に絡んだ業務をしていました。自飛行機組立前の最初から関わり、その組立過程を見て、出来上がりを確認し受け取り、日本に送り出したのは、なかなかできない経験だったと思います」(近藤さん)
「実は私は、シアトルで領収検査員をするまえは、グループ会社のZIPAIRにいました。こちらに来てから、ZIPAIR初の新造機であるボーイング787-8『JA850J』、そして『JA851J』の引き渡しに関わることができました。2機にはとても愛着がありますし、印象に残る出来事でした」(鈴木さん)
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Writer: 松 稔生(航空ライター)
国内航空会社を中心に取材を続け、国内・海外を奔走する日々を送る。ゆとり世代。
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