「お金いつまでに返します」一度も明言しない財務省 自賠責の6千億円ネコババ問題 来年度の返済額は? 現状では“110年計画”

そもそも厳しくない財政事情はあるのか?

 2023年7月、財務省が発表した22年度の税収は71.1兆円、剰余金は2.6兆円。3年連続の最多増収が続いています。鈴木氏は財政事情をどう捉えているのでしょうか。たずねました。

「わが国の財政事情、これは毎年多額の公債を発行しておりまして、また公的債務がGDPの2倍を超える水準まで積み上がっているということで、誠に残念なことでありますけれども、諸外国と比べても極めて厳しい状況にあります。さらに近年、新型コロナや物価高騰等に対して、これまでにない規模の補正予算により対応してきたことから、より一層厳しさを増しているという事実、これは変わりのないものと認識をいたしております」(11月14日閣議後会見)

 そのため財政の健全化に向けて、2025年度達成目標のプライマリーバランス(基礎的な財政収支)黒字化や債務残高対GDP比の安定的な引き下げを実現することが必要と説きますが、自動車ユーザーの保険料運用益の返済に向けた財政状況の見極めについては、さらに厳しい見方を示しました。

「こうした目標の実現を前提としても、しかしわが国の財政事情についてはその時々の経済情勢などを踏まえ、財政の持続可能性への信認が確保できるか、様々な要素や指標を見つつ評価する必要があるんだと、そのように考えております。道は遠いかもしれませんけれども、財政健全化に向けまして、引き続き努力を重ねてまいりたいと、そのように思っているところでございます」(前同)

 約5900億円は交通事故被害者救済のための財源でした。財務省、国土交通省ともに、事故被害者の保護は重要な課題と口をそろえますが、今年度からすでに自動車ユーザーが負担する賦課金を値上げする形で、毎年の事業費を補強することになりました。30年前に借入を起こした財務省が返済を継続的に進めていたならば、自動車ユーザーの新たな負担はなく、今も続いている国民の金利負担も不要でした。

 財務省と国交省の協議の結果は、12月下旬の2024年度一般会計予算案と同時に公表されます。“国家100年の返済”の行方が国民に示されます。

【了】

【え…】小学生でも「お金返して」とわかる自賠責の貸付経緯(画像)

Writer: 中島みなみ(記者)

1963年生まれ。愛知県出身。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者を経て独立。行政からみた規制や交通問題を中心に執筆。著書に『実録 衝撃DVD!交通事故の瞬間―生死をわける“一瞬”』など。

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