そりゃ鉄道は苦しくもなる 高規格道路は30年でどれだけ延びたか 沿線で増える赤字路線

約30年間で、全国の高規格道路は約2.7倍に延長。

厳しい地方の路線

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国鉄が分割民営化された1987年と比較し、輸送密度が95%減となった路線もある(画像:芸備線魅力創造プロジェクト)。

 JR西日本は2023年11月末、管内の17路線30区間について、2020年度から2022年度までの平均をとった経営状況を公表しました。開示された路線は2019年度の実績において、平均通過人員(輸送密度:1kmあたりの1日の輸送人員)が2000人/日未満を指します。

 これによると、100円の営業収入を得るのにどれだけの営業費用を要するかを表す「営業係数」が最も高かったのは、芸備線の東城~備後落合間で「1万5516」でした。次いで木次線の出雲横田~備後落合間で「5695」、3番目は大糸線の南小谷~糸魚川間で「3835」でした。

 なおそれぞれの路線の輸送密度を、国鉄が分割民営化されJR西日本へ継承された1987(昭和62)年を100として比較すると、対2022年で4%(東城~備後落合)、19%(出雲横田~備後落合)、11%(南小谷~糸魚川)でした。ちなみに因美線の東津山~智頭間は8%と、特に中国地方の山間部を行く路線が「乗られなくなっている」ことがうかがえます。

 要因のひとつには、高規格道路の開通によるモータリゼーションの加速が挙げられますが、例えば中国地方の道路整備状況を見ると、1987年時には中国縦貫自動車道や広島自動車道などしかなかったのが、2019年には中国横断自動車道や播但連絡道路など縦横に張り巡らされています。大糸線方面へ目を向けても、その東側に上信越自動車道が開通しました。国土交通省によると約30年間で、全国の高規格道路は約2.7倍に延長したそうです(4387km→1万1882km)。

 JR西日本は経営の厳しい路線の公表にあたり、「鉄道の上下分離などを含めた地域旅客運送サービスの確保に関する議論や検討を幅広く行いたい」としています。環境負荷の観点でも、一般的に鉄道は大量輸送において優位性を発揮。輸送密度の低い路線では、むしろクルマ(バス)の方が環境に優しくなるのです。

【了】

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