バス運転手が集まらないのは「不人気だから」なのか? 人手不足の本当の理由 見えづらくしている業界のマイナス思考

後手に回った結果の今

 さらにコロナ禍で運転手の仕事が一時的に大きく減少したことも影響しました。国の助成金のおかげで給料は支払われましたが、やはり目の前の仕事がないというのは不安です。多くの運転手が他の業種に転職しました。また、比較的年齢の高い運転手の比率が大きいため定年退職者が増加しており、今後は相当な数の補充が必要です。

 1台のバスに必ず1人以上の運転手が必要という点も大きな要素です。たとえば小売店や飲食店は、セルフレジやタッチパネル注文などIT活用により店員の数を減らしています。事務職や工場も同様でしょう。バスはというと、自動運転技術は既に一部が搭載されていますが、必要な運転手数は減りません。いつかは完全な自動運転が実現するとしても相当先のことになりそうで、それまでの間、IT活用により他業種が2割、3割と要員数を減らす中、バスは「1人」を「0.8人」にするわけにはいかないのです。

 バス業界の努力不足という面もあります。バス運転手は業界内での転職が比較的容易で、一人前の運転手に育て上げても競合会社に移ってしまうリスクがあります。鉄道の場合、会社負担で駅員などの経験や研修を重ねて数年かけ運転士デビューさせる代わり、業界内の転職が少なくその会社に長く勤めるのと対照的です。そのため多くのバス事業者が若手の育成より即戦力の採用に重きを置いて、新卒者や未経験者の育成が遅れていました。

 また、女性運転手の比率は約2%とわずかです。自衛官にも女性が約8%いるのと比べても女性活用が遅れています。女性運転手用のユニフォーム、休憩室などが用意されていなかったため、「最初の一人」を採用するハードルが高かったのです。

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採用イベントで行われたバス営業所見学ツアーでの運転体験(画像:バスドライバーnavi〔どらなび〕)。

 しかし言い訳をしている余裕はありません。各事業者とも、大型二種免許を持たない人向けの運転手養成制度を準備したり、営業所内に運転手を含む女性職員用の仮眠・休憩施設を用意したりするなど挽回に努めています。

 バス業界では関越道事故(2012年)、軽井沢事故(16年)と悲惨な事故が続き、無理な勤務シフトや過酷な労働条件がメディアで大きく報道されました。いずれも業界の最底辺といえる零細事業者が起こした事故ですが、バス運転手という職種全体のイメージを必要以上に悪化させてしまいました。その払拭も必要です。

【これで「不人気」と言うか?】バスドライバー採用イベントの様子(写真)

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