カスハラ客は拒否&通報 損害出たら慰謝料も タクシー会社が“強く”出るワケ

日本交通が運送約款を一部変更し、カスハラへの考え方と対応を明示しました。乗務員の名札廃止など、悪質な客から従業員を保護する機運が高まる昨今、事業者側も“強く”出られるようになってきています。

ハラスメント→「カスタマーハラスメント」を明示

 タクシー大手の日本交通が2023年12月12日付けで、同社の運送約款を一部変更しました。内容はカスタマーハラスメント(カスハラ)に関する箇所。以下に一部を抜粋します。
 
 約款では、「セクシャルハラスメント、モラルハラスメントその他の旅客の発言、行動等が旅客の意図には関係なく、当社の運転者を不快にさせ、尊厳を傷つけ、不利益を与える」などの行為を「差し控えていただきます」と明記しています。
 
 さらにカスハラ行為の中止を求め、応じない場合には、「運送の引受け又は継続を拒絶する他、運転者又は当社の判断において警察等へ通報」、また「損害の賠償および、慰謝料を請求」するとしています。

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日本交通のタクシー(画像:日本交通)。

 日本交通は運送約款の変更について次のように説明します。

「安全な運行が阻害されたり、社員の人格や尊厳を侵害されたりする行為が近年、社会問題化しており、乗務に不安を感じる社員の声が増えてまいりました。(このような行為へ)毅然と対応できる体制を整えるために運送約款を変更することといたしました」

 同社は2016(平成28)年にも約款を変更し、禁煙車内での喫煙やハラスメント行為に関する項目を追加したそう。これには、新卒乗務員や女性乗務員の採用が一段と進んでいる中で、社員がより安心して乗務できる環境を整える目的がありました。

 日本交通以外でも、タクシーでは近年、このようにカスハラ対策として運送約款を変更する事例が相次いでいます。これには、実被害を防止するだけでなく、新人を採用するうえで安心して働ける職場環境を整える目的もあると話す事業者もありました。

 今年8月には道路運送法施行規則などが一部改正され、乗務員の名札掲出が不要になりましたが、これもカスハラ対策が背景にあるものです。ちなみに日本交通では10月、車内に「防犯カメラ作動」と表示する電光掲示板の取り付けを始めるなどし、ハード面でも対策を強化してきました。

【了】

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