ハンパない威圧感…完全防弾の「移動要塞」「自走する壁」車両 一体何に使う? 切実な社会問題が背景に
日本だって他人事じゃない! 重武装事件の可能性
では、実際に使用する場合はどのようなケースが想定されるのでしょうか。
例えば、ショッピング・モールでアクティブ・シューター事件が発生したと仮定しましょう。相手は5.56mm口径の軍用アサルトライフルで武装しており、うかつに近づくことはできません。なぜなら、防弾ベストやヘルメットが守ってくれる範囲はごくわずかで、四肢や腰、顔面などを撃たれれば、無事ではすまないからです。しかし、MV-3があれば状況は一変します。
アクティブ・シューター事件を例に挙げましたが、ローン・オフェンダー(ローン・ウルフ)型の個人犯による無差別テロ事件の増加も、MV-3開発の背景にあることは間違いないでしょう。また、1997年にカリフォルニア州ノース・ハリウッドで発生した重武装での銀行強盗事件のような武装強盗対策にも有効です。
見た目に威圧感があり、とても仰々しい装備ですが、欧米の大都市圏の警察組織には必要な装備でしょう。日本も安全とは言えません。オリンピックや万博、サミットなど、国際的なイベントは、テロリストにとって格好のターゲットとなるからです。
また、こうした車両を事前に目に見える形で用意しておけば、テロリストを始めとした凶悪犯に対し、心理的に優位性を保つことができます。
本来、装備品とはそういうものです。もちろん、MV-3が必要とされるようなシチュエーションは発生しないにこしたことはないのですが、この車両があることで防げる、または事態拡大を抑止できるなら、充分に価値はあると筆者(飯柴智亮:元アメリカ陸軍将校)は考えています。
視覚的な抑止力を期待できるという点でも、MV-3は有効だと言えるのではないでしょうか。
【了】
Writer: 飯柴智亮(元アメリカ陸軍将校)
東京都出身。州立北ミシガン大学在学時に米陸軍予備役士官訓練部隊(ROTC)で訓練を受ける。1999年、米陸軍入隊。第82空挺師団に所属しOEF(不屈の自由作戦)に出征。2005年、少尉任官。ストライカー旅団などで勤務。2009年除隊。国際政治学修士。極真空手初段。
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