羽田衝突事故 JAL機の「奇跡の18分」なぜ実現? 燃える“満席の大型機”から全員生還…その経緯
「奇跡の18分」実現の経緯
「まずパイロットは着陸接地後、突然の衝撃を察知しました。その後結果的に機体は滑走路の右側に反れました。機体停止後、パイロットは当初、火災の認識はなかったそうですが、CAからの報告をうけ、所定の手続きを踏んだうえ、脱出を指示しました。パイロットは脱出前の最終客室チェックをした際に、取り残されていた方も何名かいたため、機長がお客様に脱出するようご案内し脱出を確認したうえ、最終的に後方左側のドアから脱出しています」
「客室では機体が完全停止した後、まずお客さまのパニックのコントロールをしました。そのさい、CAが左側のドアから火が見えると報告をうけ、機長に報告し脱出指示をもらい、脱出を開始しています。客室は着陸の際に煙が入り始め、機内に充満していたようです」
「脱出時、機長の指示で左右の最前方ドアから脱出を実施したものの、客室最後部は、右側のドアの近くから出火が確認されたために開けることができないとCAが判断しました。一方で、左側は出火がないことを確認したため、ドアを開放しています。なお、何らかの理由で機内のインターホンや通信システム(PAシステム)が故障したため、機長の承認を得る前に、日頃の訓練のケーススタディをもとに、CAの判断でドアを開放しています。ほかのドアが開けられなかったのは、その部分のドアの保安を担当したCAが『火災が確認され、危険を伴うため使わない』という判断をしたと考えられます」
JALの経営陣は脱出までのプロセスをこのように話します。
また、報道されている現地の動画などを見ると、同便の乗客の多くが、CA(客室乗務員)の指示に従い冷静に行動している様子も見られます。迫る恐怖のなか、乗客の方がプロの判断をしっかり仰いでいたことも、「奇跡の18分」を生み出した要因のひとつであることは間違いなさそうです。「安全のため『手荷物を持たずに脱出していただきたい』というお願いを、お客様が受け入れて下さったことが、今回の迅速な脱出につながった要因のひとつと認識しています」(JAL)
なお、JL516便と衝突した海上保安庁機の乗員は、機長を除く5人が亡くなっています。事故原因の調査については、今後、国土交通省・運輸安全委員会(JTSB)の調査官に委ねられ、JALも全面協力する姿勢を示しています。
【了】
Writer: 松 稔生(航空ライター)
国内航空会社を中心に取材を続け、国内・海外を奔走する日々を送る。ゆとり世代。
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