あれ自衛艦? 能登へ災害派遣された「白いフェリー」の正体 ますます重要になる“海の助っ人”

いざとなれば自衛官が「はくおう」を操船

 そもそも防衛省が「はくおう」のような民間保有のPFI船舶を多用するようになった背景には、自衛隊の輸送艦不足が大きく影響しています。

 防衛省・自衛隊が自前で船舶を調達し、維持・管理する場合、運航や整備などに従事する海上自衛官を増員し、所要の教育訓練を実施するとともに、個別の船舶について整備器材の確保も含めて、維持・管理を行う必要があります。

 2023年現在、海上自衛隊には基準排水量8900トンのおおすみ型輸送艦が3隻ありますが、本土から離れた南西諸島へ地上部隊を機動展開させようとすると、数が足りません。

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2023年1月28日、東京港の中央防波堤内側地区に接岸したフェリー「はくおう」(深水千翔撮影)。

 また、防衛省では陸海空自衛隊の統合部隊として「海上輸送部隊」の新設を計画していますが、そこに配備される予定の輸送艦も2000トン程度の中型クラス船舶(LSV)と数百トン程度の小型クラス船舶(LCU)、そして輸送能力約60トンの機動舟艇で、これらは車両・人員の大量輸送には向かないでしょう。

 一方で大型フェリーが数多く就航している民間の定期航路は、旅客と貨物の輸送がメインであり、船体整備やドック入りも含めて綿密な計画に従って運航しているため、自衛隊が使うには制約があります。

 そのため、防衛省は大型かつ高速のフェリーを訓練や災害派遣などの緊急時に自衛隊が優先的に運航できるよう、PFI事業契約を高速マリン・トランスポートと結んでいるのです。

 ちなみに、「はくおう」と共に七尾港に接岸した「ナッチャンWorld」(1万700総トン)も高速マリン・トランスポートが保有しています。こちらはウォータージェット推進により、航海速力36ノット(約66.67km/h)と快速なのが特徴で、今回は被災地に派遣されている国と県内外の自治体職員が、情報収集・共有をする災害対策拠点として活用されています。

 この2隻を防衛省はPFI契約に従って使用することができます。ちなみに契約額は約250億円、契約期間は2016年3月から2025年12月末です。

 2隻は民間船のため、運航するのは民間船員ですが、仮に有事が発生し民間事業者が運航できない状況に陥った場合には、防衛省が船舶そのものを借り受け、自衛官が乗り込んで、自衛隊として独自に船舶を運航できることになっています。

【広~い浴室も完備!】これがフェリー「はくおう」の船内です(写真)

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コメント

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2件のコメント

  1. 相生に繋いでたのが無くなってた。
    頑張れ!

  2. 桟橋が整備されていない港湾では車両甲板がもったいないのでトレーラーハウスかコンテナハウスを並べたらどうだろう