三菱がどうしても「巨大ピックアップトラック」を日本投入したいワケ 価格も高めの「トライトン」
トライトンから「パジェロ」復活の狼煙?
さらに三菱は、ラリーで名を馳せたモータースポーツブランド「ラリーアート」を復活させ、その伝統を受け継ぐ、新たな三菱を育むブランドとしての育成が始まっています。アジアンクロスカントリーラリー2023に「チーム三菱ラリーアート」のラリー参戦車となった新型トライトンは、その戦略の中で、技術やイメージの象徴として、非常に重要な役割を果たしているわけです。
さらに、先代トライトンは、同じラダーフレームを持つSUV「パジェロスポーツ」のベースモデルでもあり、2023年3月発表の中期経営計画には、新型トライトンをベースとして、2025年頃にパジェロスポーツも新型となることが予告されています。
車種名までは、明記されていないため、ひょっとすると「パジェロ」として昇格し、復活を遂げるなんて夢も描いてしまいます。もちろん、トライトンの進化の背景には、新興国市場におけるピックアップトラックの立ち位置の変化があります。ただ、トライトンのSUV性能を読み解くと、そんな期待が膨らむのも正直な思いなのです。そういう意味でも、トライトンの人気と今後の展開から目が離せません。
さて、ハイラックスvs新トライトンの戦いの行方ですが、数で言えばハイラックスが優位となるでしょう。それは価格だけでなく、トヨタの販売店舗数の多さも理由です。もっとも、日本のピックアップトラック市場は、限られたものであり、大きな収益を生むものにはなりません。
日本においてピックアップトラックは“趣味のための市場”といっても過言ではありません。ユーザーも個人が中心になるため、話題となることが販売にも良い効果をもたらします。つまり、ライバルの登場は、復活7年目を迎えたハイラックスの注目度も高まることになり、互いに良い刺激といえます。
巨大企業トヨタと比べると、リスクが高そうにも思える三菱トライトンの再投入ですが、これもSUV中心のモデルラインに特化した、今の三菱自動車ならではの“攻めの戦略”といえるでしょう。
【了】
Writer: 大音安弘(自動車ライター)
1980年生まれ。埼玉県出身。クルマ好きが高じて、エンジニアから自動車雑誌編集者へ。その後、フリーランスになり、現在は自動車雑誌やウェブを中心に活動中。主な活動媒体に『ナビカーズ』『オートカーデジタル』『オープナーズ』『日経トレンディネット』など。歴代の愛車は全てMT車という大のMT好き。
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