「ゲームで弱点を知った」歩兵戦闘車でロシア戦車を撃破し喝采 ウクライナの若き砲手の話は本当か
乗員セルヒーは本当にヒーローか
M2などの歩兵戦闘車は歩兵を添乗させて戦車を援護するのが任務であり、敵戦車を撃破するのは戦車の役割です。搭載する機関砲は、敵の歩兵戦闘車や装甲車を想定したもの。アメリカ軍の次期XM30歩兵戦闘車には、このような状況に備えてより強力な30~50mm機関砲を装備することが要求されています。
今回の戦闘に至った状況が不明ですが、もしT-90が先にM2を見つけて主導権を取っていたら結果は全く違ったものになったでしょう。M2は2両いたため先手を取ることができ、動画撮影できるようなドローンの支援もあるという好条件がそろった中での戦果です。戦闘の主導権を握ることで、乗員が士気を喪失しなかったこともポイントです。
ただ、これをもってウクライナのM2を評価し、ロシアのT-90を酷評するのは早計です。戦時にネットへ投稿される映像には、有利な情報だけを切り取ったプロパガンダが多い点を考慮すべきでしょう。戦場のごく一場面を恣意的に切り抜いた映像は実像を示しません。
このM2は、西側供与兵器を集中配備されている精鋭の第47機械化旅団所属で、乗員のセルヒーもヒーローのような扱いでSNSでは拡散されています。本当にこのM2の乗員かも分かりません。戦況をゲームになぞらえている点にも、若い世代にリーチするよう作られているのではないかと注意する必要があります。
M2はウクライナへ、アメリカから186両が供与されていますが、民間OSINT(公開情報調査)サイト『Oryx Blog ジャパン』によれば、1月16日現在で65両が失われているそうです。また少なくとも1両がロシア軍に鹵獲されています。ただ、「それでもよくやれたと思う」というセルヒーの言には真実味もあります。
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