【空から撮った鉄道】こんなに撮れる! 冬ならではの「空鉄」術 淡い太陽を逆手に取れば“世界”が変わる

私の撮影する鉄道空撮「空鉄(そらてつ)」では、春夏秋冬、四季折々のシーンを捉え、一般的な空撮業務ではあまり撮られない縦位置や逆光なども積極的に取り入れて表現します。今の時期にぴったりな、冬の空鉄シーンを紹介します。

この記事の目次

・トップライトは午前中に到来
・冬の低い太陽を逆手に取る
・浜名湖を渡る東海道新幹線を順光・逆光で
・偶然捉えた大阪環状線×ダイヤモンドダスト

【画像枚数】全14点

トップライトは午前中に到来

 私は「空鉄」というライフワークで約15年間、鉄道空撮をしてきて、縦位置や望遠の効果、逆光など、順光と横位置アングルが基本の空撮業務ではあまり撮らない方法を多用し、表現の可能性を追求しています。鉄道は春夏秋冬、四季折々のシーンがあり、空からでもその表情を捉えられます。今回は「冬の空鉄」と題し、冬ならではの空からのシーンを紹介しましょう。

 と、その前に、冬の気象状況をお伝えします。冬は空気が澄んで遠方まで見渡せます。そのためクリアな空撮写真が撮れて、例えば関東地方では冠雪した富士山がくっきりと望めるのが特徴です。一方、植物はおとなしくなります。落葉樹は枝だけとなり大地の色味は落ち着き、生物の息吹を感じにくいです。さらに日照時間は少なく太陽の位置も低く、夏は太陽のトップライトが正午前後であるのに対し、冬は午前中にピークが来てしまいます。

Large winter 01

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真岡鐵道の北真岡~西田井間。新雪で覆われた田畑をC12 66号機が駆ける。雪景色の蒸気機関車をどう捉えるか、上空で試行錯誤しながら撮った1枚。銀世界の田畑が美しく、漆黒の車体をアクセントにした。積雪がレフ板となって、車体が明るくなっていた(2014年2月16日、吉永陽一撮影)。

 太陽の位置が低いということは、それだけ影の長さも長いということ。例えば都市部のビル街を順光サイドから狙ったとして、建物の側面にギラっと太陽光が反射する代わりに、背後は影が伸びて陰影がキツくなり、全体的にコントラストの強いパキッとした空撮写真となります。これが夏のトップライト時間だと、影は地面へ打ち消し合うように薄れて陰影も弱くなり、全体的に描写が高精細に表現されやすくなります。

Large winter 02

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名古屋市南区、名古屋臨海鉄道の本社がある東港貨物駅の早朝。美濃赤坂駅から到着した石灰石用の朱色の貨車「ホキ2000形」の影が長く伸びていた。早朝と夕方はとくに影が長くなるので、影絵のように狙ってみた(2016年1月17日、吉永陽一撮影)。
Large winter 03

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東武鉄道の春日部駅。古き良き東武の駅の姿を長らく残していた春日部駅も、工事が始まっていた。上空で旋回しながら、レールが光り、車内の床が窓越しに輝く瞬間を狙う。太陽の位置が低く、空いている車内だと床面が反射するのが上空からでも分かるのだ(2023年12月4日、吉永陽一撮影)。

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Writer: 吉永陽一(写真作家)

1977年、東京都生まれ。大阪芸術大学写真学科卒業後、建築模型製作会社スタッフを経て空撮会社へ。フリーランスとして空撮のキャリアを積む。10数年前から長年の憧れであった鉄道空撮に取り組み、2011年の初個展「空鉄(そらてつ)」を皮切りに、個展や書籍などで数々の空撮鉄道写真を発表。「空鉄」で注目を集め、鉄道空撮はライフワークとしている。空撮はもとより旅や鉄道などの紀行取材も行い、陸空で活躍。

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