【空から撮った鉄道】富士急行線は勾配を登り続け、富士山駅でスイッチバックする

“空撮し続ける”というと仰々しいプロジェクトに思えますが、私には毎年実施するメインの空撮の行き帰りで撮り続けている鉄道がいくつかあります。そのひとつ、富士山麓電氣鐵道富士急行線を紹介します。

ちょっとした登山鉄道?

 私はいろいろな鉄道を空撮していますが、山間部の鉄道空撮を始めたのは2008(平成20)年からです。それから本格的に撮ろうと、業務の撮影以外にプランを付け足すなどして撮ってきました。今回は過去数回にわたって空撮した富士急行線の様子をお伝えします。

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頭端式構造の富士山駅へ到着する特急「富士回遊」号のE353系。富士急行線内は付属3両編成が走行する。富士山駅には車両工場が配置されており、トーマスランド号カラーを纏った6000系6500番台が確認できる(2022年11月4日、吉永陽一撮影)。

 富士急行線はJR中央本線の大月駅を起点にして、富士山を目指して南下します。会社名は2022年に富士急行から、開業当初の社名である富士山麓電氣鐵道に変わり、新たなスタートを切りました。

 直流電化の単線は桂川に沿い、途中でリニア実験線の高架橋と交差し、富士山麓に広がる富士吉田市内の富士山駅でスイッチバック。電車は方向を変えて終点の河口湖駅へと至ります。富士山駅は2011(平成23)年に富士登山の玄関口らしい名前をと、富士吉田駅から改称しました。

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大月駅を真上から捉える。富士急行線はJR中央本線の駅舎西側に乗り場がある。典型的な「国鉄から乗り換える地方私鉄路線の駅」という構造だ。元・165系パノラマエクスプレスアルプスの2000形「フジサン特急」と元・京王電鉄5000系の1000形、中央本線115系と、顔ぶれがすべて懐かしい(2009年10月27日、吉永陽一撮影)。
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北側から望む河口湖駅。駅舎は欧風で、駅前に茶色に塗られたモハ1形保存車両が鎮座する。この頃はまだ1000形や1200形の全盛期で、赤色のマッターホルン号も見える。JRからの乗り入れは115系であった(2011年10月18日、吉永陽一撮影)。

 桂川に沿った線路は、上空から俯瞰して見おろすと、目の錯覚によって平坦に見えます。しかし大月駅から20パーミル級の上り勾配が連続しており、特に三つ峠~寿間は40パーミルの急勾配も待ち受けています。仮に非電化路線だったとしたら、蒸気機関車では運行が難しかったことでしょう。日本一の独立峰、富士山に向かう地面は標高を上げており、大月駅(標高358.4m)、富士山駅(808.9m)、河口湖駅(853.7m)と、一方的な登り調子です。富士急行線はちょっとした登山鉄道ともいえましょう。

 富士急行線の空撮は1年に何回か、それも秋限定で実施してきました。“他所のついで”ということもあって、ほかの季節が無いのはバリエーション的に寂しいですが、ちょくちょくと撮ってきて、やっとのことで2022年に全線のダイジェストが撮れました。

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Writer: 吉永陽一(写真作家)

1977年、東京都生まれ。大阪芸術大学写真学科卒業後、建築模型製作会社スタッフを経て空撮会社へ。フリーランスとして空撮のキャリアを積む。10数年前から長年の憧れであった鉄道空撮に取り組み、2011年の初個展「空鉄(そらてつ)」を皮切りに、個展や書籍などで数々の空撮鉄道写真を発表。「空鉄」で注目を集め、鉄道空撮はライフワークとしている。空撮はもとより旅や鉄道などの紀行取材も行い、陸空で活躍。

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