【空から撮った鉄道】奥羽山脈をひとっ飛びして撮った「鳴子峡の奇跡」 東北3県の鉄道ダイジェスト〈前編〉
2021年9月の秋晴れの日。稲の収穫前に岩手県、山形県、宮城県で未撮影だった場所をまとめて空撮しました。撮影地点が多くボリュームがあるため、前中後編の3部作でお伝えします。第1回は釜石~鳴子峡~寒河江~山形です。
この記事の目次
・奥羽山脈を横断する5時間の飛行プラン
・まずは復興進んだ釜石へ
・杞憂に終わった鳴子峡での撮影
・「とれいゆつばさ」を追って山形市内へ
・山寺→寒河江と移動
【画像枚数】全26点
奥羽山脈を横断する5時間の飛行プラン
東北地方を空撮する機会はだんだんと減ってきました。私の空撮業務内容が変わったことが大きな理由で、まとめて鉄道の空撮となると、広大な地域ゆえに飛行時間もかさみ、かなりな予算を必要とします。以前紹介した、青森県の鉄道をまとめて撮るように、ここぞという天気を狙って、何か所も鉄道スポットを巡って一気に空撮するのです。
2021年、私は青森県や秋田県のロングフライト空撮を実施し、夏は盛岡市内も狙いました。未撮影であった山形県をはじめ、岩手県の沿岸部、数年間はご無沙汰している仙台市内を含めて一気に撮ろうと、5時間以内でぐるっと巡る空撮を実施したのです。
飛行時間5時間はたっぷりありそうに思えます。が、ベースの花巻空港からいったん太平洋側に出て、そこから戻って奥羽山脈を往復するように横断。仙台市内から太平洋側沿岸部へ出て、再び花巻空港へ戻るルートとなり、かなり移動距離もあるため忙しない道中となりました。ひとつの路線をじっくり捉えていくのではなく、ピンポイントに鉄道名所や特徴的な場所をおさえていきます。
9月12日。日曜日にしたのは、JR釜石線を走行する「SL銀河」の上り運転日があるからです。花巻空港から近い場所に蒸気機関車が走るのは好都合で、フライトの最初と最後にじっくりと撮影できました。「SL銀河」はご存知のとおり2023年に運行を終了したため、貴重な空撮となりましたが、今回はボリュームが多くなるため、前中後編が完結した後のタイミングで紹介します。
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Writer: 吉永陽一(写真作家)
1977年、東京都生まれ。大阪芸術大学写真学科卒業後、建築模型製作会社スタッフを経て空撮会社へ。フリーランスとして空撮のキャリアを積む。10数年前から長年の憧れであった鉄道空撮に取り組み、2011年の初個展「空鉄(そらてつ)」を皮切りに、個展や書籍などで数々の空撮鉄道写真を発表。「空鉄」で注目を集め、鉄道空撮はライフワークとしている。空撮はもとより旅や鉄道などの紀行取材も行い、陸空で活躍。