退役いよいよ開始? A-10「サンダーボルトII」攻撃機 反対の声を押しのけ “早まった” 理由とは
なぜ退役? カッコよくても現代戦には不向きに
しかし、そんな勇ましいイメージとは裏腹に、実際のA-10は飛行速度や機動性が他の戦闘機と比較して低く、自分の生存性を高めるアビオニクスも充分に装備されていません。
単独で敵戦闘機に対抗するのは難しく、驚異となる地対空ミサイルなどの対空兵器に対しても脆弱で、現代の航空戦においてその能力にも疑問符が持たれています。
アメリカ空軍としては、時代遅れになりつつあるA-10よりも、今後の新しい戦場で有効に使える装備品を拡充する意向であり、A-10退役によって浮いた予算や人員は、新しいF-35A「ライトニングII」戦闘機の配備や、他の現代戦に対応できる新装備に振り向けられます。
A-10削減の動きは別の基地でもすでに始まっており、同機を運用するジョージア州ムーディーズ空軍基地や、アイダホ州にあるゴーウェンフィールド州空軍基地では、A-10と入れ替わりでそれぞれF-35戦闘機とF-16戦闘機を配備する予定だそうです。
今回退役が始まったデイビス・モンサン空軍基地も、A-10飛行隊の代わりに、既存の救難部隊の拡充や、空軍特殊作戦群航空機部隊の新規配備が計画されています。
A-10の退役については、これまでも度々議論の対象となっていましたが、航空支援任務の重要性から軍内部に強い反対派がおり、また飛行隊が所属する基地の地元議員などもそれを後押ししていました。
しかし、ロシアによるウクライナ侵攻などにより、大国同士での軍事的な脅威が高まったことで、アメリカ軍も戦力の改革と更新を率先して進めており、A-10の退役はその一環として比較的早く行われることになったといえるでしょう。
あの特徴的な外見と、対地攻撃に全振りした、いうなれば一芸に秀でた形でファンの多かったA-10攻撃機も、いよいよその現役生活にピリオドを打つ日が間近に迫っているようです。
【了】
Writer: 布留川 司(ルポライター・カメラマン)
雑誌編集者を経て現在はフリーのライター・カメラマンとして活躍。最近のおもな活動は国内外の軍事関係で、海外軍事系イベントや国内の自衛隊を精力的に取材。雑誌への記事寄稿やDVDでドキュメンタリー映像作品を発表している。 公式:https://twitter.com/wolfwork_info
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