「歩道に突っ込む車を防ぐ“柵”」←違う! 歩行者の巻添え事故相次ぐ 国民が誤解している日本の道路の作り方
車両防護柵に取り替えても、横断歩道からクルマが進入
11月の事故から約3か月たった今、現場は乗用車の下敷きになった横断防止柵が地中の基礎部分からやり直して原状復帰されています。そのうえで「防護柵設置のお知らせ」が掲示され、横断抑止柵を「ガードパイプ」と呼ばれる車両防護柵に取り替える内容が示されています。
工事終了が5月下旬までと少し長いことを除けば、強度が増して安心……と言いたいところですが、国民が誤解している道路の作り方の問題点は、もう一つあります。
交差点の柵が車両防護柵に変わっても、まったく安心できない。そんな事故例となったのが、渋谷区猿楽町の代官山交番前交差点で今年2月19日に起きた事故です。昨年11月の事故現場からわずか100m、坂を上った場所がこの事故の現場です。
50代の男性が運転する乗用車が、これも緩やかなカーブを曲がり切れず直進し、歩道からビルに突入。地下にある飲食店の階段の壁にぶつかって止まりました。助手席の同乗者が負傷をしましたが、信号待ちをする歩行者に被害はありませんでした。
道路管理者である東京都建設局の建設事務所によると、この場所では歩道橋の鉄橋にあわせて強度のある車両防護柵に取り替えて、横断抑止柵を撤去しました。ところが、2月19日に起きた事故では、歩行者が使う横断歩道部分から乗用車が進入し、防護柵は役に立たちませんでした。過去に起きた事故については知らなかったので、対策はとれなかったと話しています。
せっかく車両の進入を防ぐ防護柵を設置しても、横断歩道までふさいでしまうことはできません。スタンダードな横断歩道の幅は約4m。乗用車の幅は約1.7m。意図しなくても通り抜けることが可能で、実際そうした事故が起きているのです。事故が起きた場所を把握することはできないものでしょうか。
では、どうすればいいのか。実は、事故が起きても、歩行者を最大限守るための道路設計に変わらないことが最大の問題なのです。
事故は起こした人が悪いのであって、運転を誤らなければ事故は起きない。それは当然のことなのですが、交差点の柵は、歩行者が車道に出ないため。車両は歩道に侵入しないという旧来の考え方が変わらないと、この2か所のように柵の交換で終わってしまいます。
2つの事故現場となった交差点は、いずれも道路が90度で交わる十字路ではなく、Y字路的な変則交差点でした。
いつも通る道路の“柵”の違いを知れば、道路を管理する自治体が、道をどう考えているかがわかるかもしれません。
【了】
Writer: 中島みなみ(記者)
1963年生まれ。愛知県出身。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者を経て独立。行政からみた規制や交通問題を中心に執筆。著書に『実録 衝撃DVD!交通事故の瞬間―生死をわける“一瞬”』など。
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