着工直前だった!?「第2パナマ運河」なぜ頓挫したのか 世界の物流救う驚愕スケール やっぱり裏に中国が
またしても暗躍の中国「債務のワナ」
中米での運河構想は16世紀からあるようですが、本格化したのは19世紀後半からで、中南米で影響力を強めていたアメリアは、ニカラグアとパナマの両国を、運河建設の有力候補に掲げます。
最終的には1914年にパナマ運河を完成させますが、この間にもアメリカはニカラグアに軍事干渉を続けます。
実際同国で反米政権が誕生すると、アメリカは1910年代初めに軍隊を派遣し、1930年代前半まで占領しています。もちろん、世界戦略上極めて重要な、運河建設権などの確保が主な狙いです。
2000年代半ば、反米・親中路線を掲げるニカラグアのオルテガ大統領は、中国が勧める一大運河計画に飛びつきました。総工費は400億ドル、当時の円換算で4兆円以上に上る莫大な資金は、ニカラグアのGDPのざっと4年分(2014年時点)に相当します。オルテガ氏にとっては非常に魅力的だったに違いありません。
プロジェクトは運河建設を中心に、港湾整備や空港建設、周辺地域のインフラ整備や観光資源開発など多岐にわたり、数十万人の新規雇用も誕生するというものでした。
ただし、やはり、おいしい話には裏があるようで、中国側は見返りに運河の管理権の50年間租借(さらに50年間の租借延長の権利も含む)を要求したようです。
まさに「債務のワナ」の典型ですが、実際に資金調達で動いたのは「香港ニカラグア運河開発投資有限公司」(HKNDグループ)という企業でした。中国本土で通信系企業グループの事実上子会社です。
ただ、2014年には同計画が本決まりとなり、いよいよ工事が本格スタートするかと見られていた矢先、中国内外の投資家から多額の資金を集めていたHKNDグループは、突然資金繰りが悪化し、2018年に同社は事実上破綻しました。これにより運河計画は完全に頓挫してしまったのです。
一説には、「アメリカの裏庭で中国主導による運河建設など絶対に許さない」とホワイトハウスが潰しにかかったのでは、と囁かれていますが、現在のところ運河計画が復活したという話は聞かれません。
【了】
Writer: 深川孝行
1962年、東京生まれ。法政大学文学部地理学科卒業後、ビジネス雑誌などの各編集長を経てフリージャーナリストに。物流、電機・通信、防衛、旅行、ホテル、テーマパーク業界を得意とする。著書(共著含む)多数。日本大学で非常勤講師(国際法)の経験もある。
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