「これ軽だろ?高性能すぎる」 伝説のバケモノKカーが生まれた“時代” スズキの魂「アルトワークス」

ターボ!ターボ!ターボ! 白熱するスペック競争

 軽ボンネットバンの高性能化に大きく舵を切ったのが、FF(前輪駆動車)主力となるなかFR(後輪駆動車)のままで、ライバルに居住性能で後れを取っていた三菱でした。83年3月、4代目ミニカシリーズに、軽自動車初のターボ車を追加。すかさず他社も追随し、83年10月には、ダイハツ ミラクオーレ、12月にはスバル レックスコンビにもターボ車が登場しました。

 この間、各メーカーはエンジンの最高出力の数値を競います。三菱は全面刷新しFF化を図った5代目ミニカで、ターボ車に軽自動車初となるインタークーラー付きターボエンジンを採用することで、当時最強の最高出力42ps(グロス値)を実現。しかしダイハツも85年8月にミラのフルモデルチェンジでターボ車の性能強化を図り、ミニカのターボ仕様を大きく引き離す最高出力52ps(同)を叩き出しました。

 さらに、ミラの優勢を決定的としたのが、85年11月に設定されたエアロパーツ付きの「TR-XX」です。高性能でイケてる軽として、若い世代から絶大な支持を受けたのでした。

 もちろん、スズキも手をこまねいていたわけではありません。84年9月にフルモデルチェンジした2代目アルトに、85年9月、シリーズ初のターボ車「アルトターボ」を設定。86年7月の改良では最高出力を48psまで強化していますが、ミラには及びませんでした。

 しかし、その裏で、さらなる高性能モデルの開発が進んでいたのです。それが87年2月に追加された「ワークス」でした。

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ミラTR-XX。ターボ競争でミラの優位を決定づけた(画像:ダイハツ)。

●「高性能すぎる」 初代アルトワークスついに登場

 ワークスの専用エンジンには、軽自動車初となる新開発の550cc電子制御燃料噴射装置付き3気筒DOHCインタークーラーターボを設定。最高出力64ps/7500rpm(ネット値)、最大トルク7.3kg・mを叩き出しました。リッター当たりでは、117.8psにもなる高性能ユニットで、その性能を安定して発揮すべく、軽自動車初の水冷式オイルクーラーやESA(電子進角)も採用されていました。

 さらに高性能化に合わせ、低扁平の13インチ65タイヤに加え、駆動方式も最上位モデルにはビスカスカップリング式フルタイム4WDを搭載するなど、スポーツカーに求められる走行性能も追求していました。

 64psは当時の最強スペックとなりましたが、ワークスは当初、78psを叩き出していました。しかし、あまりの高性能振りに運輸省(当時)が難色を示したため、デチューンすることで発売を実現。これが現在まで続く、軽自動車の自主規制である最大出力を64psとする出力規制の原点となっています。

【軽カー史上最高にカッコいい!?】これが初代「アルトワークス」です(写真)

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