「戦車」はタンク? チャリオット? どうして日本ではふたつとも同じ呼び方になってしまったのか
実は最初は日本でも「タンク」呼びだった!?
実は日本でもこの陸の新兵器が登場した当初は単にTankをカタカナ読みした「タンク」で呼んでいました。1918年10月に、歴史上最初に日本が所有する戦車となったMk.IVひし形戦車をイギリスから輸入した際にも、当時の新聞には「タンク」と表記されており、まだ「戦車」ではありませんでした。
では、なぜ戦車と呼ばれるようになったかはハッキリしていませんが、1922年の論文では、既に「Tank」の訳語として戦車が当てられるようになっており、大正時代の末には「戦車」呼びが定着していたと思われます。陸軍の会合で、とある中尉がチャリオットに使われた「戦車」という言葉を「タンク」に当ててはどうかと提案したともいわれています。
日本にとって「チャリオット(戦車)」の馴染みが薄かったため受け入れられた言葉かもしれません。ちなみに中国では、Tankをそのまま訳した「坦克」と呼んでおり、戦車(チャリオット)とは明確にわけています。
では、日本のように戦車(タンク)を現代の「チャリオット」のように考えている国は、ほかにあるのでしょうか。実はあります。
チャリオットが生まれた古代オリエント時代に中心地であった中東、イスラエルにその血をひく戦車が残されています。言わずと知れたイスラエルの主力戦車「メルカバ」。この名は「チャリオット」をヘブライ語読みした言葉であり、『旧約聖書』に登場する「神の戦車」を意味する名前だそうです。分類では、「タンク」かも知れませんが、「チャリオット」もまた、現代戦車の中に息づいているのです。
【了】
※誤字を修正しました(5月3日10時00分)。
Writer: 凪破真名(歴史ライター・編集)
なぎはまな。歴史は古代から近現代まで広く深く。2019年現在はフリー編集者として、某雑誌の軍事部門で編集・ライティングの日々。趣味は自衛隊の基地・駐屯地めぐりとアナログゲーム。
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