「A-10の廃止はいつだ?」米議会で空軍首脳が今後を明かす 国民的人気の対地攻撃機「欲しがっている国がある」とも

海外供与は問題山積! 飛ばし続けるのはやはり無理か

 ケンドール空軍長官は、A-10の問題点について次のように説明しました。

「問題点は機体自体にあります。A-10がアメリカから退役した場合、この航空機に対する運用のための支援もなくなります。そのA-10を維持しようとする国は(運用面で)非常に困難な状況となるでしょう。また、この機体はかなり古く、45年ほど前のモノであり、交換部品の入手も困難です」

 A-10の運用が始まったのは1977年で、そこから現在まで第一線で使い続けるために段階的なアップグレードを継続して行っています。なかには、老朽化した主翼部分を新造品に交換するといった大規模な改修まで含まれます。

 もし仮に、アメリカ以外の国がA-10の運用を行うのであれば、アメリカ空軍と、継続的な要求に応えられる防衛産業の支援が不可欠でしょう。しかし、開発元のアメリカから同機が完全に姿を消した後で、導入国がそれを単独で行うのは簡単なことではありません。

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アメリカ議会下院の公聴会で説明するアメリカ空軍参謀長のデイビッド・アルビン大将(画像:アメリカ国防総省)。

 また、A-10自体の性能が現代の戦場に対応できないことも問題視されています。A-10は低速で機動性が低く、ステルス性は皆無で、かつ高度なアビオニクスも装備していません。そのため、地対空ミサイルなどの近代的な防空システムが整備された現代の戦場では、撃墜される可能性が非常に高い脆弱な存在だと、当のアメリカ空軍自身も考えています。

 今回の公聴会でも、ケンドール空軍長官いわく、ロシアの侵略によって世界中の国々から武器支援を求めているウクライナですら「(A-10の)生存性を懸念している」という理由で、この機体への関心が低いとの説明でした。

 この発言を言葉どおり捉えると、一時ウクライナ軍の司令官などが地上攻撃機の戦力強化のためにA-10の名前を出して支援を呼びかけていたものの、アメリカには同機を提供する意思はほとんどないと断言できそうです。

 これらを鑑みると、攻撃機としてはいまだに異例の人気を保っているA-10「サンダーボルトII」ですが、その姿が見られる時間は、やはりそう長く残ってはいないようです。

【了】

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Writer: 布留川 司(ルポライター・カメラマン)

雑誌編集者を経て現在はフリーのライター・カメラマンとして活躍。最近のおもな活動は国内外の軍事関係で、海外軍事系イベントや国内の自衛隊を精力的に取材。雑誌への記事寄稿やDVDでドキュメンタリー映像作品を発表している。 公式:https://twitter.com/wolfwork_info

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