『ガンダム』『エヴァ』リミッター解除! 戦闘機でもできる!? ほとんどのパイロットが使ったことない“禁断のモード”とは

映画だから使用が許される 現実に使うと…?

 もともとF-15はパワーがあり余っていることから「V-MAX」はあまり必要とされず、パイロットのほぼ全員が「知ってはいるけど使ったことはない」状態であるようです。

 エンジン以外に、飛行制御システムのリミッターも存在します。Su-27「フランカー」の「コブラ機動」は、失速を抑えるためのリミッターを無効化することで、驚異的な機首上げが可能になります。

 F/A-18「ホーネット」またはF/A-18E/F「スーパーホーネット」には、「Gリミッターオーバーライド」という機能があります。これは、設計最大許容G(7.5G)を一時的に33%引き上げるもので、映画『トップガン・マーヴェリック』でも登場しました。マーヴェリックたちは限界を超えた10Gという困難な旋回へ挑戦しています。映像でも操縦桿と一緒に「Gリミッターオーバーライド」のハンドルを一緒に引く演出を確認できます。

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第二次世界大戦で運用された戦闘機の多くがリミッター解除を備えた。日本の零式艦上戦闘機(零戦)は「オーバーブースト」と呼んだ(関 賢太郎撮影)。

 ロボットアニメのリミッター解除は、戦闘における切り札として機能しますが、本質的にはドラマ性を高めるための装置であり、試練を乗り越えることで主人公たちの成長と勝利につながることを強調する場合が多いようです。

 一方の現実では、特に現代の戦闘機では損耗が前提であった第二次世界大戦世代の戦闘機と異なり、30~50年にも及ぶ長寿命化が求められています。そのため機体に過度の負担を掛けるリミッター解除は慎重に運用され、リミッターを扱うパイロットの判断と責任が問われます。

 例えばF-15の飛行マニュアルでは「V-MAX」の使用が禁止されているため、原則的に使ってはいけない機能です。もし使用した場合は正当な理由をきちんと説明できなければ、罰則を受けることになるでしょう。

 現実のリミッター解除は、アニメのようなドラマチックな展開とは無縁の「地味な」装置であるといえるのではないでしょうか。

【了】

【ブォォォッッ!】これが「リミッター解除」した戦闘機です!(写真」)

Writer: 関 賢太郎(航空軍事評論家)

1981年生まれ。航空軍事記者、写真家。航空専門誌などにて活躍中であると同時に世界の航空事情を取材し、自身のウェブサイト「MASDF」(http://www.masdf.com/)でその成果を発表している。著書に『JASDF F-2』など10冊以上。

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