爆売れ戦闘機「ファントムII」はなぜ異形の翼に? 傑作機が“あの形”になるまで

生産総数5195機、西側の超音速ジェット戦闘機として最大の生産数を誇るF-4「ファントムII」戦闘機。ユニークな外形が特徴ですが、なぜそのようになったのでしょうか。

風洞実験で「翼上に反らせよう」!

 生産総数5195機、西側の超音速ジェット戦闘機として最大の生産数を誇るF-4「ファントムII」戦闘機の1号機は1958年5月27日に初飛行しました。航空自衛隊の主力戦闘機としても活躍し、日本でも人気のある戦闘機ですが、その特徴的な外観もファンを惹きつけるものがあります。

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航空自衛隊のF-4EJ改「ファントムII」(画像:航空自衛隊)。

「ファントムII」は上反角がついた外翼、そして下反角のついた尾翼を持っています。これは本機を設計した戦闘機の名門、マクドネル社(当時)が行った風洞実験の結果に基づいています。

 これにより、飛行安定性を確保するには主翼に5度の上反角が必要と判明したものの、このときには内翼部分の設計がすでに完了していました。そのため、外翼部分にのみ12度の上反角を与えるという方法が採用されました。上反角が始まる部分には空母で運用するための折り畳み機構があります。

一方、尾翼に下反角がつけられているのは、機首を上げて迎角を取った時でも十分な効きを確保するためです。この尾翼には下面失速を防止するために小型の固定式スラット(翼前縁に備わる高揚力装置)があります。

なんで5000機以上もつくられたの?

 5000機を超える大量生産が行われた理由は、本機の優秀な性能に加え2つの理由があります。

それはベトナム戦争の長期化、そしてマクナマラ国防長官(当時)の方針で、海軍が採用した本機を空軍でも使用することになったことです。アメリカ軍では結果的に、海軍、空軍、海兵隊の三軍が「ファントム」を使用しました。空軍の展示飛行隊サンダーバーズと海軍のブルー・エンジェルスの双方がF-4戦闘機を使用していた時期もあり、まさにアメリカを代表する戦闘機であったといえるでしょう。

 そもそも本機は当初、アメリカ海軍の艦隊防空戦闘機として計画され、海軍初の全天候戦闘機として開発されました。レーダー誘導ミサイルの運用能力とともに大きな主翼と強力なエンジンを2基備えていたため、8トンを超える兵装搭載能力を持っていました。そのため、戦闘爆撃機としての能力を備えていました。

 この多用途能力に目を付けたのが、ケネディー大統領に任命されたマクナマラ国防長官です。同氏は費用対効果を最優先する方針を掲げて海軍・空軍共通の戦闘機としてF-4の導入を推進しました。

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