F-16戦闘機が「いるだけ」でロシアは黙る!? ウクライナへ供与目前 空を一変させるその意味

「HARM」撃てるF-16がいるだけで疑心暗鬼に

 F-16と「HARM」そして「HTS」の組み合わせは、この「相手にレーダーOFFを強制させる」という点において白眉なのです。ゆえに、地対空ミサイルを使わせないミッションを「SEAD(敵防空網制圧)」と呼び、短い時間に限った航空優勢を確保することができます。これによって、自衛だけではなく他機が行う航空作戦の遂行を助けることも可能です。

 ちなみに、永続的な航空優勢確保のために相手を物理的に破壊してしまう作戦を「DEAD(敵防空網破壊)」と呼びます。基本的には「SEAD」と変わりません。

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対レーダーミサイル「HARM」のターゲティング装置である「HTS」(画像:アメリカ空軍)。

「HTS」で得た位置情報は「HARM」よりは遅いものの、威力において数倍上回るその他巡航ミサイルやGPS誘導爆弾といった兵装でも使用することが可能なため、こうした強力な兵装はレーダーを無力化した後に、指揮車や発射機などを攻撃するのに適します。

 F-16導入がウクライナの戦局にどのような影響を与えるのか、現時点では断言することはできません。しかし「F-16が存在する」という事実があるだけでも、これまでとは違いロシア側に地対空ミサイルを無闇に使えなくする効果を発揮します。そのため、たとえ少数機であったとしても、ロシア側は大きな脅威として見なすことは間違いないでしょう。

【了】

【デッカイな~】空対空ミサイルと明らかサイズ違う「HARM」その大きさを見比べ

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Writer: 関 賢太郎(航空軍事評論家)

1981年生まれ。航空軍事記者、写真家。航空専門誌などにて活躍中であると同時に世界の航空事情を取材し、自身のウェブサイト「MASDF」(http://www.masdf.com/)でその成果を発表している。著書に『JASDF F-2』など10冊以上。

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