え、人いないの!? 世界最強ステルス爆撃機に「パイロットがセルフ給油」のワケ 実は“軍事的理由”が
人手不足が原因…、じゃない?
「軍も人手不足で、ついにステルス爆撃機ですらセルフ給油で兼業化?」と心配する人もいるかもしれません。しかし、今回の給油作業にはれっきとした軍事的な理由が存在しています。
アメリカ空軍は最近、展開訓練においてACE(エース)という新戦略を取り入れ、それに伴った新しい方式の訓練を実施しています。ACEとは「Agile Combat Employment」の頭文字からなる略称で、日本語に訳すと「迅速な戦力展開」となります。
近年、中国ミサイル技術の向上によって、本来は安全であるはずの空軍基地も、遠方から直接攻撃される可能性が出てきました。このため、アメリカ空軍は空軍基地を安全な後方エリア、すなわち「聖域」とは考えず、戦争状態になった場合は、所属する航空機を他の基地や空港に移動させ、そこから運用することを想定した訓練を実施しています。
そういったなかで移動先は空軍基地ではなく、軍用機を運用していない一般空港の可能性も想定する必要があるため、展開訓練では各員が本来の任務の枠を超えて、各種作業を行えるようにしているのです。
たとえば、今回の給油作業も、B-2が普段は使用していない基地や空港に降りた場合、パイロットに給油作業を担えるスキルがあれば、そこに専門の補給担当要員がいなくても給油することが可能になり、運用面でも柔軟性を高めることが可能になります。
今回の展開訓練における給油作業は、機体エンジンを止めた状態(通称:コールドピット)で行いましたが、今後はより速い再離陸が可能なエンジンを動かした状態で燃料を補給する「ホットピット」給油を目指すとのことです。
戦争では「想定外」のことが発生するのが常です。その点では、今回のB-2爆撃機へのパイロットの「セルフ給油」も、常に実戦を想定したアメリカ軍ならではの訓練と言えるのかもしれません。
【了】
Writer: 布留川 司(ルポライター・カメラマン)
雑誌編集者を経て現在はフリーのライター・カメラマンとして活躍。最近のおもな活動は国内外の軍事関係で、海外軍事系イベントや国内の自衛隊を精力的に取材。雑誌への記事寄稿やDVDでドキュメンタリー映像作品を発表している。 公式:https://twitter.com/wolfwork_info
コメント