この電車「寝台特急」だったんだぜ…? 凄まじい魔改造の痕跡 ローカル電車への“無理やり転用”なぜ行われたのか
花形の「寝台特急」が、地方都市のローカル輸送用に相次ぎ改造されたことがありました。車内には、ローカル電車にはあまりに不釣り合いな設備を、無理やりどうにかした跡が多数。今も語り草の「近郊型改造」はなぜ行われたのでしょうか。
「特急形」から「近郊形」へ 魔改造じゃないワケがない
かつての花形だった寝台特急形電車が、地方都市の近郊輸送用に「魔改造」された車両がありました。その車両とは、近郊型電車の419系と715系。なぜ寝台特急形電車が改造のベースに選ばれたのでしょうか。その歴史的背景も紐解きます。
鉄道の世界では、違う用途に車両を転用することが稀に行われており、「特急形」や「急行形」の電車を都市部近郊のローカル輸送用電車に改造した例もあります。その中でも「魔改造」を受けて誕生した419系・715系近郊形電車は、飛び抜けて変わった車両として現在でも語り草になっています。
通常、特急形はドアが両端に1もしくは2か所、座席は前後の向きを変えられるクロスシート(横座席)が並ぶことが基本です。急行形もドア配置などは同様ですが、座席はおおむね固定式のボックスシートでした。
近郊形は、都市近郊や地域輸送用に設計された車両です。ドアは片側に3か所、車内にはクロスシートとロングシート(縦座席)を組み合わせた「セミクロスシート」を配しています。これに対し山手線に代表される通勤形は、ドアは片側4か所、シートはロングシート(縦座席)です。近年はJR東日本のE231系やE233系、E235系電車のように、同じ形式で近郊形と通勤形を作り分けるような車両も登場しており、新たに「一般形」と称する区分も生まれています。
419系・715系は特急形電車から近郊形電車に改造されて誕生した車両ですが、これらの車両が登場したのは、国鉄時代でした。
国鉄末期における地方都市部の近郊輸送は「長編成・少ない運転本数」という運転形態でした。しかしこの形態は、利用客が多めな都市近郊の輸送として最適ではありませんでした。また、エリアによっては機関車が牽引する客車による普通列車が残っており、ドアを手で開閉するような古い客車も使用されていました。
そこで国鉄は、1984(昭和59)年から翌年にかけ、残っていた客車列車の電車・ディーゼルカー化を推進。すでに普通列車として電車を走らせていた地域も含め、列車の短編成化・運転本数増加によるフリークエンシー化を実施して、サービスの大幅な向上を行いました。
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