74式戦車よりも重いの!? “見た目トラックな”ロケットランチャー 裏には米国の影も

共同開発した理由は弾薬にあり

 実は、今回のGMARSでラインメタル社が手を組んだロッキード・マーチン社は、HIMARSの製造を担っているため、GMARSのランチャー部分もロッキード・マーチン製のものが使われているそうです。

 これは開発期間の短縮と開発リスクの低減を狙ったように思えますが、メーカー担当者によるとその一番のメリットは、HIMARSやその履帯式ロケットランチャーMLRSとの弾薬共有化だそうです。

 HIMARSは、もともとはMLRS(Multiple Launch Rocket System:多連装ロケットシステム)の縮小軽量版ともいえる存在で、そこで使用される弾薬は共有化されており、メーカーではMFOM(MLRS Family of Munitions:MLRSファミリー弾薬)と呼ぶほどに規格化されたものとなっています。

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アメリカ陸軍のMLRS(画像:アメリカ陸軍)。

 MLRSはフィンランド、フランス、ドイツ、イタリアなどNATO(北大西洋条約機構)加盟国を中心に多数の国で運用されており、すでに多くのMFOMが備蓄され、運用のためのインフラも整っています。これらを共用できるというのは、GMARSにとって他の新型ロケット砲システムにない大きなメリットといえるでしょう。

 本来なら国産の独自弾薬を開発するというのは、自国の運用に合わせた独自仕様を作ることができるだけでなく、自国の防衛産業を育成するという点においても大きなメリットがあります。

 しかしウクライナ紛争の教訓として、戦時には膨大な弾薬を消費することから、継続して戦い続けるには、同盟国どうしで弾薬を融通できた方が、メリットが大きいのです。以上の観点から、弾薬や装備品の共通化は、今後の起きるかもしれない戦争に備えるための、兵站面での必須条件といえるでしょう。

 GMARSの弾薬共通化については、ラインメタルの担当者も「欧州諸国のグローバルな相互運用性を確立できる」と説明していました。今回のドイツとアメリカの防衛企業による共同開発は、今後の兵器開発と運用において「相互運用性」という要素がいかに重要になるかを証明する事例となるかもしれません。

【了】

【船上からドーン!!】これがHIMARSの射撃シーンです。めったに見られない弾体も

Writer: 布留川 司(ルポライター・カメラマン)

雑誌編集者を経て現在はフリーのライター・カメラマンとして活躍。最近のおもな活動は国内外の軍事関係で、海外軍事系イベントや国内の自衛隊を精力的に取材。雑誌への記事寄稿やDVDでドキュメンタリー映像作品を発表している。 公式:https://twitter.com/wolfwork_info

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