沈んだ戦艦「プリンス・オブ・ウェールズ」の“部品を略奪した”疑いのある船が拿捕される! そもそもなぜ盗む?
マレー沖海戦で沈んだ艦をなぜ盗む?
核実験以前の金属部品は貴重なものとなっている!?
マレーシア海上法令執行庁(MMEA)は2024年7月2、ペラ州タンジュン・ハントゥ北西14.8海里(約27.4km)において、中国の浚渫(しゅんせつ)船「チュアン・ホン68」を拿捕したと発表しました。
現地の報道などによりますと、同船は、第二次世界大戦中にマレーシア沖で旧日本海軍機の攻撃により沈没したイギリスの戦艦「プリンス・オブ・ウェールズ」と巡洋戦艦「レパルス」の残がいを破砕し、一部の部品を奪った疑いを持たれている船だそうです。
2023年5月には、同船がマレーシアのスクラップヤードで、軍艦の大砲らしきものを降ろしている映像が拡散され、MMEAは捜査官が錆びた砲弾やスクラップを確認したと発表。この件に関してイギリス海軍国立博物館が「海軍の遺産の喪失と、これがイギリス海軍の歴史の理解に与える影響に動揺しています」と懸念を表明したこともあります。
その後も同船は、何度か2隻の沈没地点とされる海域でサルベージをしているのが目撃されており、ほかにも度々、自動船舶識別装置(AIS)で確認できないときがあるようです。
MMEAによると、今回の拿捕は国内取引・生活費省からの有効な書類のない60バレルものLPG調理ガスが船内に積み込まれていたために行い、これを押収したとのこと。さらに、入港許可書の不備、および船員名簿に乗組員が載っていなかったことも確認され、商船法や供給管理法違反などの疑いで、乗組員全員と船は捜査とさらなる措置のために拘留されたとのことです。
なお、史上初めて核実験が行われた1945年7月16日以前に建造された艦船の金属は、空気中に拡散された放射性同位元素が含まれていないため、ホールボディカウンターやガイガーカウンターなど、放射性物質の量を測定する装置に欠かせない素材として高く取引されます。そのため、第二次世界大戦で日米英豪蘭の艦船が数多く沈んだ東南アジアでは、違法なサルベージが後を絶ちません。
【了】
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