羽田じゃない方の都内空港で続く”異常事態”…「事故の対策です」←本当に解決になってます?

調布空港から発着できないことのデメリットとは

 これは、供用規定により短いままで使用せざるをえない調布空港の不都合な問題を浮き彫りにしたともいえます。また、興味深いことに、事故後しばらくして、滑走路の両端に接続する誘導路の位置が変更されました。ここには、空港管理者である東京都の、規定上では滑走路長は変更できないものの、既存の舗装部分をより広く使えるように有効活用することで批判をかわす狙いが見え隠れしています。

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調布飛行場の位置(画像:国土交通省)。

 しかし、皮肉なことに、この事故を受けて供用規定の内容はさらに厳しくなり、同空港で自家用機の正常な運航が事実上不可能になりました。このことで都内には自家用機を定置し、また運航できる公共飛行場が存在しなくなったのです。これは、後進国以下の状況と断言できます。

 海外では、自家用機や社有機を使って柔軟性に富んだ移動が可能で、それが経済活動を支えています。それができない日本の企業が外国の企業と競争するのは不可能です。日本の国際競争力は、国内の自家用機数が減少するのに歩調を合わせるかのごとく、落ち続けているという見方もあるほどです。

 そして、この現状がもたらすデメリットは、なにも経済面だけではありません。

 もし、東京のような巨大都市で大規模災害が発生すれば、地上の交通インフラが破壊され、長期間にわたり使用不能になることは必至です。

 災害時の救援活動に小型機が重要な役割を担うことは歴史が証明しています。つまり、都民の貴重な財産である調布空港は、経済活性化に加え、都民の命を守る観点からも、縮小ではなく拡充してゆくことが必要ではないかと筆者は考えています。

【了】

【写真】調布空港を大きく変えた墜落事故、現場の様子

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Writer: 中島二郎(航空アナリスト)

各国の航空行政と航空産業を調査するフリーのアナリスト。

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コメント

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1件のコメント

  1. いつも興味深いお話、楽しみに読んでいます。

    記事の中で2015年の調布飛行場での事故が取り上げられています。その中で「機体が落下した住宅では火災が発生し、残された犬の救助に向かって焼死した住民1名と搭乗者1名の2名が犠牲になったのです。」と、死者数を2人と書いています。

    航空事故調査報告書(AA2017-4、個人所属パイパー式PA-46-350P型JA4060墜落)の要旨、概要には次のように記載されています。

    「同機には、機長ほか同乗者4名の計5名が搭乗していたが、機長及び同乗者1名が死亡し、同乗者3名が重傷を負った。また、住民1名が死亡し、住民2名が軽傷を負った。」

    死者数は3人だと思います。