一時漂流の「高速ジェット船」機関トラブルが他人事でないワケ 維持更新できる人材だいじょうぶ?

新船の建造がハードル高いワケ

 なぜ、日本がここまでジェットフォイルを多用しているのか。それは多島国家である点が大きいでしょう。比較的近距離に有人離島が点在するため、1隻あたりの収容人数や長大な航続距離よりも、短時間で往来できる方に軸足が置かれるからです。
 
 また、飛行機と競合する路線に優れた高速性を持つジェットフォイルが投入されているというのもあります。

 ただ、2020年7月に就航した東海汽船の「セブンアイランド結」を除くと、いずれも竣工から20年以上が経過した老朽船で、リプレイスが課題となっています。

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東海汽船の「セブンアイランド結」。2020年に就役した国内で最も新しいジェットフォイル(柘植優介撮影)。

 実際、このたび航行不能になった「セブンアイランド愛」は1980年10月竣工(東海汽船での運航は2002年より)で、すでに40年以上も使われ続けているベテラン船です。種子屋久高速船が運航する「トッピー7」は、さらに古い1979年竣工と、老朽化が課題になっています。

 しかし、代替船を検討する際にネックになるのが、50億円を超える高額な船価です。

 2020年に就役した「セブンアイランド結」を建造する際も、1隻だけでは費用の問題から建造が難しかったため、当初はジェットフォイルを所有する他社と連携して建造できないか検討されたものの、折り合いがつかず難航しました。
 
 一方で建造する側の川崎重工も、このタイミングで建造しないと、ノウハウを持った技術者がいなくなり、ジェットフォイルの技術が伝承できないという深刻な状況を抱えていました。

 そこで東海汽船が使った手が、JRTT(鉄道建設・運輸施設整備支援機構)の共有建造制度を利用するというもの。これに東京都から船価の45%に当たる23億円の建造補助を得て、さらにエンジンなどの主要部品も従来船のものを流用するなどしてコストを抑えたことで、ようやく建造にこぎつけています。

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