高速道路と「甲子園」実は深い関係が? “甲子園の砂”ならぬ、持ち込まれたモノとは?
高校野球のいわゆる「甲子園」が行われる甲子園球場といえば、壁面にツタが生い茂っている外観が特徴です。ツタの種類は主に「ナツヅタ」と呼ばれる品種ですが、実はこのツタは高速道路と深い関係があります。
甲子園球場といえば砂、じゃなくてツタ!
2024年8月7日から夏の甲子園こと「第106回全国高等学校野球選手権大会」が開催されます。同大会の会場となる甲子園球場といえば、壁面にツタが生い茂っている外観が特徴です。実はこのツタは高速道路と深い関係があります。
高速道路では環境保全だけでなく安全性・景観性の向上といった観点から、1970年代より本線やSA・PAの緑化にかなりの力を入れています。NEXCO各社を合わせた総緑地面積は2018年の段階で山手線の内側に相当する約9100ヘクタールに及ぶそうです。
なかでも、高速道路の遮音壁やコンクリートを緑化する「壁面緑化」は、NEXCO東日本によると、コンクリートや金属などの硬い印象を和らげるとともに、ヒートアイランド現象や地球温暖化など環境負荷を軽減させる働きがあるとのことです。
こうした壁面には、自然界において山の林や岩肌に巻きひげの先の吸盤でくっつき自生する植物であるツタ属を使うことが多く、そのなかでも「ナツヅタ」の成長は早く、吸盤で壁を這いあがる特徴があることから、壁面緑化に適しています。このナツヅタこそ、甲子園球場のツタと同じ種類です。
しかし、高速道路の壁面緑化を始めた当初、日本道路公団(NEXCOグループの前身)は「ナツヅタ」の確保に困っていたそうです。
NEXCO東日本によると、そこで注目されたのが大量の「ナツヅタ」が自生している甲子園球場だったそうです。高速道路の緑化を担当していた日本道路公団名神高速道路試験所石部分室(現:NEXCO総研 緑化技術センター)は、甲子園球場へツタの提供を打診。許可を得て譲り受けた種子と育てた母樹から採った種子を育て、1972年から2002年まで、高速道路の壁面緑化のために植え付けを行っていたとのことです。その数は約43万本に及びます。
2002年以降は一般的な市場でも「ナツヅタ」の購入が容易になったため、高速道路の壁面に甲子園球場から採取されたツタが使われることはなくなったようです。ちなみに、甲子園球場のツタに関しては、リニューアル工事の一環として2006年に一時撤去されていましたが、全国の高校へ贈呈した甲子園もうち、生育状態の良いものを甲子園に里帰りさせ、2009年に再植樹を完了させています。
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