「見た目ほぼ戦艦ですよね?」 条約無視でどんどんデカくなった“重巡洋艦” ほら、やっぱり戦艦に間違われた

アドミラル・ヒッパー級は3隻が完成

 アドミラル・ヒッパー級の舷側は垂直装甲と、水平装甲の一部を傾斜させて垂直装甲の裏に二重装甲として配置していましたが、1枚板の分厚い装甲を重視した他国と比較すると、重量が重く、防御された区画が少ない欠点がありました。それでも垂直側防御力は他国に劣りませんでしたが、水平装甲はかなり薄く、航空爆弾や遠距離砲戦の命中弾には不安がありました。

 最大の問題点は機関で、鋼材の強度不足と過度な軽量化、高温高圧化により不具合が多発し、長時間の高速運転ができませんでした。アドミラル・ヒッパー級は5隻が計画され、うち完成したのは3隻。最後に建造された「プリンツ・オイゲン」では船体がさらに大型化し、基準排水量は1万5660トンに増大しています。

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原爆実験のため、浅瀬に放置されたアドミラル・ヒッパー級の「プリンツ・オイゲン」(画像:アメリカ陸軍宇宙ミサイル防衛司令部)。

 第二次世界大戦で「アドミラル・ヒッパー」は、駆逐艦3隻撃沈、輸送船・商船を計11隻撃沈などの戦果を上げます。3番艦「プリンツ・オイゲン」は1941(昭和16)年5月、戦艦「ビスマルク」と共にライン演習作戦に出撃し、戦艦と誤認されてイギリス戦艦に砲撃されるなどして、砲火を分散させました。戦艦に似せた設計意図が当たったわけです。そして終戦まで生き延びました。

 終戦時「プリンツ・オイゲン」はドイツで唯一の行動可能な大型艦でしたが、戦後の1946(昭和21)年、ビキニ環礁で行われた原爆実験に駆り出され、沈没しました。

【了】

※一部修正しました(8月8日10時50分)。

【写真】艦隊を組む重巡「アドミラル・ヒッパー」

Writer: 安藤昌季(乗りものライター)

ゲーム雑誌でゲームデザインをした経験を活かして、鉄道会社のキャラクター企画に携わるうちに、乗りものや歴史、ミリタリーの記事も書くようになった乗りものライター。著書『日本全国2万3997.8キロ イラストルポ乗り歩き』など、イラスト多めで、一般人にもわかりやすい乗りもの本が持ち味。

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