「F-15EXいた!…ん?よく見たら違うやんけ!」 空の祭典で“異例の露出法”をしたボーイングの狙い

「全部のせ」だけにとどまらないF-15最新型の見せ方

 ファンボロー航空ショーの2日目には、別のF-15 QA(QA536)が、ミサイルも燃料タンクも搭載しない、いわゆる「クリーン形態」で登場しました。ここでは前日のフル武装したQAと同じように急上昇や急旋回を繰り返しています。まるで、ミサイルを外部に吊り下げようとしまいと、パワフルぶりに違いはないとアピールしているかのようでした。

 ボーイングがF-15 QAを用いて、こうした異例の演出を行った背景には、ロシアによるウクライナ侵攻により欧州に生まれた強い警戒感に商機と見出したためと、筆者は推測しています。

自国の確固たる防衛の構築には、ステルス性能こそF-35に適わないもののミサイル搭載数は上回り、パワフルぶりも負けないF-15EXが適していると、ほぼ仕様が同じF-15 QAを用いながらボーイングはアピールしたのです。

 今回のショーでボーイングは、民間機部門においてテスト機カラーの「777X」「737MAX10」のふたつの最新鋭機の出展を自粛しています。そのような、民間機部門のアピール低下をカバーするために、F-15EXをアピールしたい考えもあったのでしょう。F-15EX・QAを少なくとも3機を持ち込んだのも、その表れと見てよいでしょう。

 なお、実際、ボーイング関係者はショー期間中、筆者の取材に対して「F-15EXに焦点を当てて展示した」と話していました。今回のユニークな展示方法は、明らかな狙いがあったと見られます。

【了】

【写真】カオス…これが「F-15EXですよ顔で展示された別機種」の様子です

Writer: 相良静造(航空ジャーナリスト)

さがら せいぞう。航空月刊誌を中心に、軍民を問わず航空関係の執筆を続ける。著書に、航空自衛隊の戦闘機選定の歴史を追った「F-Xの真実」(秀和システム)がある。

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