飛行機の“窓”、よく見ると必ず…! そこにある「世界初のジェット旅客機」が残した教訓とは 初飛行から75周年

革新的すぎるゆえの悲劇だった?

 その結果、機体上部の、アンテナ窓と室窓のコーナー部に亀裂があったことが確認されました。この亀裂は何度も圧力を受けた結果、金属疲労により発生したものでした。

 この発見により、事故機の墜落原因はエンジントラブルや悪天候ではなく、窓から発生した亀裂が胴体全体に及び、与圧機体の内外気圧差による爆発的な空中分解が起きたことであると結論づけられます。

 しかし、ほかの便の墜落原因も同様だったかについては証明できませんでした。

 特に、南アフリカ航空201便に使用されていた機体はわずか900回しか飛行しておらず、金属疲労原因ではない可能性もあるとされました。そこで「コメット」の胴体が全て収まる特殊な水槽を製作し、1954年5月26日に検証実験を実施。水槽や機内を水で満たし、その水を増減させることで上空と同じような圧力を作り出し、飛行でかかる負荷を再現することになりました。

 実験は最長5か月程度かかると予想されましたが、わずか2週間半で結果が出ます。1830回目の加圧において実験機体の窓枠に亀裂が発生したのです。

 開発当初から与圧による金属疲労の問題は考慮されていました。しかしその耐久力の限界飛行回数は約5万4000回と考えられており、ほかの実験での加圧も含め、計3060回の飛行回数にしかなっていない実験機体の亀裂は予想外のものでした。

 水槽実験の結果、短時間で亀裂が入った直接的な原因は、客室の窓の形が四角い鋭角だったことだと判明しました。

 機体が上昇し、機内が加圧されるたび、窓の角部分に力が集中してしまい、それが繰り返されることで、予想以上に早く機体に亀裂が入り空中分解したと推測されました。それまでは加圧による荷重の集中がどのように起こるかの知見が不十分でした。
 
 この調査後、事故機と同じ角ばった窓を採用していた「コメット」Mk.Iは永久的に飛行禁止となりました。また、亀裂が入っても致命的な破壊に至らない設計方法や、より正確な機体寿命を見積もることができる試験方法が確立されるなど、事故で得られた教訓は後のジェット旅客機開発に活かされることとなりました。この事故以降のジェット旅客機は、窓の形が丸に近い曲線的なものになっています。

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現在の旅客機の窓が丸みを帯びているのはコメットの事故が関係している(乗りものニュース編集部撮影)。

 なお、この「コメット」空中分解の事故は、「リバティー船沈没事故」や「タコマ橋の崩壊」と並び、機械工学において必ずといっていいほど教わる事柄となっています。

【了】

【胴体全てを水槽に!?】これが、「コメット」墜落後に行われた実験の様子です(写真)

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