「新基準原付?税金は『自動二輪』ですよ」 ユーザーが望まない“原付消滅” 税負担だけアップ!? 分厚い“縦割りの壁”
基準作りに“高みの見物”か 総務省
新基準原付の規格を作る議論に、なぜ総務省は参加しなかったのでしょうか。今も国民の安価な移動手段を守るという目的に対して、距離を置き続けます。総務省の担当者はこう話します。
「新基準原付がどういうものか。正式な文書は出ていない。総務省としてこうすべき(※税制改正要望をするべき)と思っている方向性はない。税制改正のプロセスにのせるか、のせないかは経産省のお考えがある」
新基準原付はバイクユーザーが求めたわけではありません。きっかけは環境省による排出ガス規制の強化でした。バイクの電動化で対応は可能ですが、市場での受け入れは進んでおらず、新基準原付は安価な移動手段の代替として必要だったのです。
省庁一体で移動手段の確保に乗り出すことは、なぜできなかったのでしょうか。税制改正は1年に一度だけというタイミングを総務省は強調しますが、その裏には、「新原付は原付ではない」という否定的な見解が透けて見えます。
法改正には長い時間がかかります。車両基準を作る上でも法改正の必要性を問う議論がありましたが、道路交通法改正には至りませんでした。仮に税法上125ccを50ccとみなすことに法改正が必要であれば、総務省も省庁間の議論に入って、早くから新基準原付成立のための助言をすべきではなかったのでしょうか。
この問題に限らず、バイクは道路運送車両法、道路交通法、地方税法、駐車場法など法律によって車両解釈が違います。地方自治体が行う駐車場問題でも、駐車できる車両を排気量で区分しています。税のみならず、駐車場問題でも新基準原付をめぐる“歪み”が生じることが予想されます。
なぜバイクユーザーは縦割りの行政判断を通過するたびに、不要なコスト負担を求められているのでしょうか。新基準原付は、その構図から抜け出すことのできない典型例といえます。
※文中で「原付」と「自動二輪」という呼称をしていますが、地方税法には「自動二輪」という種別はありません。記事ではわかりやすさと、新基準原付が主に道路交通法に依拠する問題なので、この呼称を使いました。
【了】
Writer: 中島みなみ(記者)
1963年生まれ。愛知県出身。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者を経て独立。行政からみた規制や交通問題を中心に執筆。著書に『実録 衝撃DVD!交通事故の瞬間―生死をわける“一瞬”』など。
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