「主翼の前に短い翼を…」パッと見奇怪な飛行機、何がメリット? 実はメチャ合理的です!

ホームビルド機では「先翼機」=珍しくないよ? になった経緯

 この欠点は大きな引き起こしが必要な離着陸時に最も顕著になるため、スウェーデン生まれの戦闘機「ビゲン」では離着陸性能を重視し、開発元のサーブ社が先翼を採用することで解決を図っています。前翼機は、前翼も主翼も上向きの揚力を発生するため良好な離着陸性能に加え飛行抵抗が少なくなるほか、燃料消費の低減も見込めるメリットがあります。これが、とくにホームビルド機で、先翼機が好まれる理由と言えるでしょう。

 今回の航空ショーでも展示された先翼ビジネス機、ビーチクラフト「スターシップ」の生みの親である航空機設計者バート・ルータン氏は、世界初の宇宙往還機「スペースシップ・ワン」の開発と製造を行ったスケールドコンポジット社の創始者であり、それ以外にも数々のユニークな形状を持つ前翼機を生み出したことでも知られています。

同氏が設計した最初の前翼機が1972年に初飛行した「バリー・ビゲン(Vari Viggen)」です。

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ライト兄弟が最初に動力飛行を成功させた「フライヤー」号の模型(細谷泰正撮影)。

「バリー・ビゲン」は同氏がカリフォルニア・ポリテクニック州立大学の学生時代にスウェーデンの「ビゲン」戦闘機から着想を得て設計したもので、2人乗りで200馬力エンジンを搭載し、240km/hで巡航します。そして、本家の「ビゲン」戦闘機にあやかって、離陸距離350m・着陸距離260mと、高い短距離離着陸性能を備えているのも特長でした。

 その後、バート・ルータン氏はホームビルド機「ベリーイージー(Vari Eze)」を開発し、1974年に初飛行に成功させました。「ベリーイージー」は組み立てキットとして販売され、1985年までにおよそ2000機の売上を記録。ホームビルド機の代表的な機種としておよそ半世紀の実績があります。

なお、今回の航空ショーには、これらの影響を受けて開発され、キットで販売されている4人乗り前翼機の「ベロシティー」なども揃いました。同氏が現代の飛行機における、前翼機の発展に大きな役割を果たしたことが、今回の航空ショーでも示されたわけです。

 また、現代世界で開発競争が行われている、電動・ハイブリッド航空機分野においても、前翼のスタイルを採用しているものもあります。もしかすると、来年あたりからは前翼構成の電動・ハイブリッド航空機も登場するのでは、と筆者(細谷泰正:航空評論家/元AOPA JAPAN理事))は予想しています。

【了】

【写真】奇っ怪! これが前翼式で「徹頭徹尾異形」になったプロペラ機全貌です

Writer: 細谷泰正(航空評論家/元AOPA JAPAN理事)

航空評論家、各国の航空行政、航空機研究が専門。日本オーナーパイロット協会(AOPA-JAPAN)元理事

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