消えた1万キロの鉄道網「もう一つの“国鉄”」とは? 日本が失った“縄文時代からの営み”

全国から消えた約1万キロの鉄道網、それが「森林鉄道」です。その多くは国が建設し、木材運搬だけでなく山林で働く人々の生活を支えていましたが、戦後は急速に衰退。いま、各地に眠る森林鉄道の跡は何を物語っているのでしょうか。

山の中に“街” 通学も森鉄で

 森林鉄道の周辺には製材所だけでなく、林業で働く人とその家族も多数住んでいました。山の中に街があったのです。場所によっては商店、映画館なども立ち並び、学校もあり子供らの通学のための列車も走りました。森林鉄道は鉄道事業法による鉄道ではなかったため、これは“便乗”というグレーな扱いだったそうです。

 かつての秋田駅東口は、仁別森林鉄道の貯木場とターミナルがあり、山と秋田市内を行き来する多くの人々と荷物と木材が行き交っていました。

 森林鉄道の保線や駅の運転扱いは、林業従事者の家族が担っていることも多く、背中に赤ん坊を背負ったお母さんが炊事の合間に電信を打ち、列車運行に必要なタブレット(通票)を受け渡したり、線路のポイントを操作したりしていました。今は人気が無い、深い山中にかつて鉄道が敷かれ、街があり、暮らしと仕事と鉄道が混ざり合っていたのです。

 今は寂しくなったり廃止されたりしたJRのローカル線なども、かつては森林鉄道が集めた木材の輸送で賑わっていました。森林鉄道が毛細血管のように貨物を集め、鉄道に流し込んでいたのでローカル線も中山間地も賑わっていたのです。

山はゼロカーボンのエネルギー源だった

 森林鉄道が運んだのは、木材や住民だけではありませんでした。福島などの山中には国営の炭焼き工場があり、森林鉄道で木炭を搬出していました。

 炭焼きというとお爺さんが一人釜で炭を焼き、背負子で運ぶというイメージがあるかもしれませんが、国営の工場で炭を生産し鉄道で輸送していたということは、もうこれはエネルギー産業そのものです。かつて山陰の木炭は山陽の製鉄所で使われていました。

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高知県・伊尾木森林鉄道の遺構(山田和昭撮影)。

 木炭は樹木が二酸化炭素を吸収したものを燃やすので、排出量はゼロとカウントされます。しかも雨が多い温帯の日本では樹木が育ち、再生可能です。木を切って砂漠化してしまった中東などと異なり、日本は縄文時代から植林をして森を守り活用してきました。これを近代産業に活かしたのが林業と森林鉄道だったのです。

 遠くの外国からはるばると運んできた石油や天然ガスを燃やして発電し、これをバッテリーに貯めて走らせるとエコと言われるのが現代ですが、すぐそこにある山が、再生可能なゼロカーボンのエネルギー源だったことを思い出しても良いのではないでしょうか。

【スゲ――!】これ全部「廃線」 凄まじい鉄道網だった森林鉄道(地図/写真)

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