「夜行列車」ブーム!? 相次ぐ“復活”に鉄道ファン歓喜…それ以外の「価値」は今あるのか?

世界はどうなの? 夜行列車が活きる“条件”がある

 欧州では高速鉄道が発達して、一時夜行列車が減りましたが、環境意識の高まりから「フライトシェイム(飛び恥)」運動に触発され、飛行機利用を敬遠する層の夜行列車利用が伸びています。

 オーストリアのナイトジェットは路線を延ばし最高速度230km/hの車両も登場しています。中国は、鉄道で国を発展させる“鉄路先行”で高速鉄道が猛烈な勢いで建設され3万kmものネットワークとなりましたが、広い国土なので高速鉄道にも寝台車やファーストクラスに相当する商務車が投入されています。

 ロシアのシベリア鉄道は、日本人には現在利用が難しい状況ですが、手ごろな価格で7泊8日走り続ける列車を、地域の人も多く利用している様子でした。

 米国・カナダ・オーストラリアの長距離移動は飛行機が主流ですが、2泊以上の長距離列車も設定され、寝台車もあります。ただ料金は高めです。

 米国Amtrakでは長距離列車を手ごろな価格の座席(Coach)と高額な寝台(Sleeper)とに階級分けし、料金やサービスに差をつけていますが、高速バスやLCCとの競合が厳しい模様です。Sleeperは筆者が乗った列車でも全区間乗り通す人は数組に限られ、一晩のみの利用が大半でした。利用者に聞くと、医師やITなど高収入の職業の人が多く、「自動車を長距離運転するには時間がもったいないし、飛行機で行くには近すぎる」移動に使われていて、高速鉄道が少ない米国ならではの夜行需要でした。

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米国Amtrakの食堂車(筆者提供)。

 人口の多いインドやタイでは、中間駅の需要もあるようで、やはり夜行列車が使われています。趣味的には、お手軽な料金で食堂車などの付帯サービスも含めて夜行列車の旅を快適に楽しむなら、中国が狙い目のようです。

 こうしてみると夜行列車が活用されるシーンは、広大な国土、環境意識、人口、高速道路や高速鉄道との棲み分けや連携が影響するようです。日本では企業の排出ガス管理が製造・物流分野に留まることが多いですが、今後、社員の移動も管理対象となってくると、欧州と同様に、飛行機から列車への移転が起きるかもしれません。

【了】

【ベッドから落ちたらヤバイ!?】いま走ってる「夜行列車」を写真で見る(29枚)

Writer: 山田和昭(日本鉄道マーケティング代表、元若桜鉄道社長)

1987年早大理工卒。若桜鉄道の公募社長として経営再建に取り組んだほか、近江鉄道の上下分離の推進、由利高原鉄道、定期航路 津エアポートラインに携わる。現在、日本鉄道マーケティング代表として鉄道の再生支援・講演・執筆、物流改革等を行う。

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