領空侵犯対処で大失敗のスイス「軍の営業時間は午前9時からです」日本にとっても他人事ではない理由

ヨーロッパの永世中立国スイスは、その国是を守るため国民皆兵の政策を堅持しています。しかし、冷戦終結後、国防予算の削減を行った結果、軍の即応性が損なわれる事態に陥ったとか。日本にとっても他人事ではないようです。

スイス空軍が10年前にやっちまった大失態

 2024年8月26日、防衛省は中国人民解放空軍のY-9情報収集機1機が、長崎県男女群島沖で領空侵犯したと発表しました。

 これに対し、航空自衛隊は戦闘機を緊急発進(スクランブル)させ、通告および警告を実施するなどして対応にあたったそうですが、このような素早い対応がとれたのは24時間365日、絶え間なく航空自衛隊が周辺空域を警戒監視し、全国の基地では戦闘機が常時待機しているからにほかなりません。

 もし、このような即応態勢がなかったら、中国軍機の領空侵犯はもっと長く続いていたでしょう。じつはこのような態勢を維持するには相応のコストがかかります。しかし、世界を見渡すと、立派な戦闘機を保有していても、予算削減と軍の規模縮小の影響から、空軍戦闘機がスクランブルできず失態を演じたケースがありました。

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スイス空軍の主力戦闘機F/A-18C「ホーネット」。緊急発進待機は全て本機で実施している。30機を保有し当面のあいだ、運用可能な唯一の戦闘機である(関 賢太郎撮影)。

 それは、今から10年ほど前のスイスで起こりました。2014年2月17日午前6時頃、スイス西部の主要都市ジュネーブにある国際空港に、ハイジャック犯に乗っ取られた旅客機が着陸したのです。のちに「エチオピア航空702便ハイジャック事件」と呼ばれるようになったこの事件では、最終的に犯人は逮捕され、乗員乗客は全員無事でしたが、このときスイス社会を震撼させたのは、ハイジャックそのものよりもスイス軍の対応でした。

 ハイジャック事件が空軍の業務時間外(午前8時~12時、午後1時30分~午後5時)である早朝に発生したため、戦闘機のスクランブル発進が行われず、フランス空軍に頼らざるを得なかったという事実が明るみになったのです。

【懐かしの戦闘機だ!】これがパートタイマー操縦士によるスイス空軍のアクロバット飛行隊です(写真)

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