被害総額40億円! 驚愕の「クラシックカー投資サギ事件」優秀なレストア職人なぜ悪事に手を染めた?

2024年9月、兵庫県警は詐欺容疑で高級クラシックカーのレストア販売会社オーナーを逮捕しました。余罪を含めると集金総額は56億円にもなるようですが、なぜ彼は悪の道に走ったのでしょうか。そこには業界の特殊な現状がありました。

ハマったら抜け出せない「今さえしのげれば」の泥沼

 こうした状況でなにか1つ間違いが起これば、会社の経営は一気に傾くことになり、急場をしのぐため他の客が支払った前払金や手付金による補填を余儀なくされます。そして、どこかで負債を埋められなければ、徐々に経営は自転車操業となっていくでしょう。そのようなことを繰り返せば、負債は雪だるま式に増えていき、やがては経営破綻を招きかねません。

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整備工場でクラシックカーをレストアする様子。写真はイメージ(画像:PIXTA)。

 こうなると、トランプのババ抜きと同じで、最後の客は前払金を支払ったのに「クルマが届かない」「修理がされていない」「預けていたクルマが戻ってこない」といったトラブルに巻き込まれることになります。

 日本経済の長期低迷に加えて、「アベノミクス」による円安やコロナ禍などの影響もあり、「STAR CRAFT」の経営はかなり苦しくなっていたのでしょう。室崎容疑者は道を踏み外していることは内心気づきながらも、「今をしのげれば必ず挽回できる」との楽観バイアスでどんどんと深みにハマり、やがては戻るに戻れないところへと自らを追い込んでしまったものと筆者は考えます。その結果が経営する会社の破綻、詐欺罪による逮捕という、誰にとっても最悪の結末に至ったのではないでしょうか。

 今回の事件は、被害額の大きさと投資を謳ったことから世間の注目を集めましたが、じつはクラシックカーの業界では、けっして珍しい話ではありません。クラシックカーの購入や修理を専門店に依頼する場合は、経営状態に問題はないか、信頼に値する業者かを付き合う前にしっかり見定める必要があるようです。

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Writer:

「自動車やクルマを中心にした乗り物系ライター。愛車は1967年型アルファロメオ1300GTジュニア、2010年型フィアット500PINK!、モト・グッツィV11スポーツ、ヤマハ・グランドマジェスティ250、スズキGN125H、ホンダ・スーパーカブ110「天気の子」。著書は「萌えだらけの車選び」「最強! 連合艦隊オールスターズ」「『世界の銃』完全読本」ほか」に

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