「最新イージス艦が航行不能」事件 原因はテロか?スパイか?…「小学生でもわかるミス」だった!?

イージスシステムを積んだ最初期の軍艦である「ヨークタウン」が、海上で突然航行不能になりました。原因を追究してみると、その理由は単純ではありますが、多くの人には予想外でした。

計算できないのに計算し続けた結果…

 乗組員のひとりが、燃料バルブのトラブルシューティングを実行中のアプリケーションに誤って空欄を入力してしまいました。これを0(ゼロ)と判断した1台のコンピューターは「それは除算できない」という判断を下せず、答えの出ない計算を延々と続けてしまいます。

 そして、ネットワークでつながったほかのコンピューターにも影響を与えはじめ、不毛な計算を続けていくうちにメモリーも大量消費。やがてエラーと報告され続けたオペレーティングシステムは全てをダウンさせてしまった、これが真相です。もちろん全ての機能をダウンさせたことで、艦の航行システムが制御不能になってしまいました。

 このトラブルについて、一部の関係者から「原因はアメリカ海軍がパソコンの導入を急ぎ過ぎたからだ」「導入時の契約の際に政治的な配慮があった」「エンジニアの意見は取り入れられなかった」などといった不満が噴出しました。アメリカ海軍は、その後「Windows NT」を導入した経緯を説明したうえで、今後は別のOSの導入も検討すると発表しています。

 ただ、この事故を受けて若干の修正と改善をコンピューターシステムに加えると、それ以降は目立ったトラブルもなく、2004年に「ヨークタウン」は退役しています。事故当初は「軍艦でWindows NTを使用するなど、運を天に任せると同じ」と、事故を起こしたのは不安定なOSそのものであるという批判もあったみたいですが、時が経つにつれ、そういった声は収まるようになった模様です。

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タイコンデロガ級ミサイル巡洋艦の垂直発射システムのセル(画像:アメリカ海軍)。

 とはいえ、この事件は、決して他人事とは言えないでしょう。日本の自衛隊でも最新技術を入れた際のトラブルや、単純なヒューマンエラーを発端に大きな事故の原因になるケースはありえるからです。

【了】

【後輩はまだ現役!】これが、タイコンデロガ級ミサイルを再装填する様子です(写真)

Writer:

なぎはまな。歴史は古代から近現代まで広く深く。2019年現在はフリー編集者として、某雑誌の軍事部門で編集・ライティングの日々。趣味は自衛隊の基地・駐屯地めぐりとアナログゲーム。

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