開業迫る上野東京ライン 常磐線に憶測渦巻く

気象庁地磁気観測所が影響を与える常磐線

 まず常磐線は車両が違います。取手駅(茨城県)よりも北へ行く青い帯の「中距離電車」はE531系という車両で、直流の電気でも交流の電気でも走れるという特徴があります。常磐線の取手~藤代間に架線の電気が直流と交流とで切り替わる場所があり、両方の電気で走れる車両でないと取手駅よりも北、土浦駅や水戸駅方面へ行くことができないからです。

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上野東京ラインに関係する路線の概略図。このうち常磐線の取手~藤代間以北だけ架線の電気が交流になる。

 このE531系は直流を使う東海道本線を走れるほか、編成もグリーン車2両を含む10両が基本で、付属編成が5両の最大15両と東海道本線と同じなので、直通運転自体は難しくありません。ただそれ以外の点で、大きな問題があるのです。

 例えばA駅~B駅間の所要時間が片道5分、折り返し発車するまでに必要な時間が5分とすると、1本の編成でA駅~B駅間を1時間あたり3往復できます。しかしA駅~B駅間の所要時間が片道25分、折り返し時間が5分だとすると、1時間で1往復しかできません。1時間に3往復走らせたければ、編成数が3本必要です。つまり運転区間を長くしつつ列車運行間隔を維持する場合、より多くの編成が必要になります。

 この点について、宇都宮・高崎線と東海道本線の車両は基本的に同一であるため、直通運転で運転区間が長くなったとしても宇都宮・高崎線の車両が東海道本線を、その代わりに東海道本線の車両が宇都宮・高崎線を走ることになるだけなので、問題ありません。むしろ折り返しに必要な時間が削れるため、効率がアップします。

 しかし常磐線の場合は、状況が異なります。E531系は常磐線の全線と東海道本線を走れますが、東海道本線の電車は直流の電気にしか対応していないため、常磐線の取手駅より北へ行くことができません。つまり常磐線のE531系が東海道本線に多数直通し遠くまで行ってしまったら、それが常磐線に戻ってくるまで時間がかかるため、取手駅から北側を走れる車両が足りなくなってしまうのです。

 そのため上野東京ラインが開業しても、常磐線と東海道本線の直通運転は宇都宮・高崎線と比べ容易ではないことから果たしてどうなるのか、様々な憶測を呼んでいるというわけです。

 ちなみに常磐線が直流と交流、ふたつの電気を使っている理由は、同線沿線の茨城県石岡市柿岡に気象庁地磁気観測所があるため。直流の電気ではその観測に影響を与えてしまうことから、常磐線の取手~藤代間以北では交流の電気を使っているのです。

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